2013/01/16
破産による制約
管理処分権の喪失
通常、自己の財産や所有物については、自分自身で管理し、処分する権限があります(管理処分権といいます)。これは当然のことです。
ただし、破産手続開始決定が出ることにより、破産者は、破産手続開始決定前に有していた財産に対する管理処分権を喪失することになります。
そして、破産者の管理処分権喪失と同時に、破産者が有していた財産について、破産財団という財団を構成することになり、破産管財人が破産者に代わって、一切の管理処分権を有することになります。
そのため、破産者は、破産手続開始決定後、自己の財産を処分することができなくなってしまうのです。
ただし、破産財団を構成する破産者の財産は、あくまでも破産手続開始決定時に有していた財産に限られます。そのため、破産者が破産手続開始決定後に働いてお金を稼いだり、親からお金をもらったりして取得した財産は、新得財産といい、破産財団を構成しない財産となるため、破産者が自由に管理・処分することができます。
自由の制限(破産者の受ける拘束)
破産手続について、弁護士に破産申立てを依頼し、申立準備が整えば裁判所に破産申立てを行います。破産申立て後、裁判所が破産手続開始決定を出すことになります。この破産手続開始決定が出ることにより、破産者には以下の自由の制限が生じます。
1 説明義務
説明義務とは、破産者に対し、破産管財人や債権者集会からの求めがあれば、破産に関し必要な説明をしなければならないという義務です。
破産手続きを進めるにあたり、破産者からの情報提供がなければ、現実問題として財産の有無、金額、処分済みの財産、債権者の状況等を把握することが困難になります。
そのため破産法は、破産者に対し、破産管財人や債権者集会からの求めに応じて説明義務を課しているのです。
なお、説明義務を果たさない場合は免責不許可事由となり得るため、注意が必要です。
ただ、説明義務といっても身構えるようなものではありません。破産手続に協力することは当然のことであり、誠実に対処すれば十分です。
2 居住の制限
居住の制限とは、破産者が現在の住居を離れて引っ越しをする場合、または長期の旅行を行う場合に裁判所の許可がなければできないという制限です。
上記説明義務との関係で、破産者が勝手に引っ越しをしたり、無断で長期旅行に出かけたりすれば、必要なタイミングで説明義務を果たせなくなるおそれがあります。そのため、裁判所としては破産者の居所を把握しておく必要があります。
したがって、破産者が引っ越しをする場合、または長期の旅行に出かける場合には、事前に申立代理人を通じて裁判所に許可申請を行い、許可を得る必要があります。
もっとも、居住の制限については、引っ越しの許可申請を行えば裁判所から許可が出る運用が一般的であり、実務上は大きな制約にはなっていません。
3 通信の秘密の制限
通信の秘密の制限とは、破産者宛の郵便物が破産管財人の法律事務所へ転送され、破産管財人が郵便物を開封するという制限をいいます。
破産者宛の郵便物を開封することで、当初の調査から漏れていた債権者が発見されたり、隠していた財産の存在が発覚したりすることがあり、実務上重要な制度となっています。
例えば、年末の時期には生命保険料控除証明書が届きますが、これが破産管財人に転送されることにより、申告されていなかった生命保険の存在が明らかになることもあります。
なお、転送・開封後の郵便物は、破産管財人から返却を受けることができます。
ちなみに、通信の秘密の制限を受けるのは破産者のみです。そのため、破産者と同居の親族(例:妻名義や子ども名義)の郵便物は制限を受けず、通常どおり配達されます。また、あくまで郵便物に対する制限であるため、クロネコヤマトや佐川急便などの配達物が転送されることはありません。
4 引致・看守
法律上、裁判所が必要と認めるときは、破産者の引致・看守を命じることができます。
ただし、現実に破産者が引致・看守されるケースはほぼありませんので、心配しなくてもよいでしょう。
資格の制限
破産法上の制限ではありませんが、一定の政策目的のため、特別法で個別に破産による公私の資格制限が設けられていることがあります。
ご相談を受ける事案として多いものとして、生命保険募集人及び損害保険代理店(保険業法)、警備業者、警備員(警備業法)、宅地建物取引業者、宅地建物取引主任者(宅地建物取引業法)などが挙げられます。
また、弁護士、弁理士、公認会計士等、資格に基づく職業についても資格制限がかかることがあります。
その他にも様々な資格制限があるため、特殊なご職業、地位、資格を有する場合は、資格制限の有無について個別に弁護士へご相談ください。
なお、法人の取締役については、委任契約の終了事由(民法653条2号)にはなりますが、資格制限がかかることにはなりません。