破産による制約

管理処分権の喪失

 通常,自己の財産,所有物について,自分自身で管理し,処分する権限があります(管理処分権といいます)。これは当然のことです。

ただ,破産手続開始決定が出ることにより,破産者は,破産手続開始決定前に有していた財産に対する管理処分権を喪失することになります。

そして,破産者の管理処分権喪失と同時に,破産者が有していた財産について,破産財団という財団を構成することになり,破産管財人が破産者に代わって,一切の管理処分権を有することになります。

そのため,破産者は,破産手続開始決定後,自己の財産を処分することができなくなってしまうのです。

ただ,破産財団を構成する破産者の財産について,あくまでも破産手続開始決定時に有していた財産に限られます。そのため,破産者が破産手続開始決定後,働いてお金を稼いだり,親からお金をもらったりして取得した財産は,新得財産といい,上記破産財団を構成しない財産になり,破産者が自由に管理,処分することができます。

自由の制限(破産者の受ける拘束)

破産手続きについて,弁護士へ,破産申立ての依頼をし,申立準備が整えば,裁判所へ,破産申立てを行います。破産申立後,裁判所が破産手続開始決定を出すことになります。この破産手続開始決定が出ることにより,破産者に対し,以下の自由の制限が生じることになります。

1 説明義務

説明義務とは,破産者に対し,破産管財人債権者集会からの求めがあれば,破産に関し必要な説明をしなければならないという義務です。

破産手続きを進めるに際し,破産者からの情報提供がなければ,現実問題として,財産の有無,金額,処分済みの財産や債権者の状況等,把握することが困難になります。

そのため,破産法は,破産者に対し,破産管財人や債権者集会からの求めに応じ,説明義務を課しているのです。

説明義務を果たさない場合,免責不許可事由となりますので,注意が必要です。

ただ,説明義務といっても身構えるようなものでもなく,破産手続きに協力をすることは当然のことであり,誠実に対処をすれば十分です。

2 居住の制限

居住の制限とは,破産者が現在の住居を離れて引っ越しをする場合,または長期の旅行を行う場合,裁判所の許可がなければできないという制限になります。

上記説明義務との兼ね合いで,破産者が勝手に引っ越しをしたり,無断で長期旅行に出かけたりすれば,必要なタイミングで説明義務を果たすことができなくなるおそれがあるため,裁判所が破産者の居所を把握しておく必要があります。

そのため,破産者は,引っ越しをする場合,または長期の旅行に出かける場合,事前に申立代理人を通じて,裁判所へ,許可の申請を行い,許可を得ることが必要です。

居住の制限について,引っ越しの許可申請を行えば,裁判所から許可が出ているというのが現実の運用になっており,大きな制約にはなっていません。

3 通信の秘密の制限

通信の秘密の制限とは,破産者宛の郵便物について,破産管財人の法律事務所へ転送をされ,破産管財人が郵便物を開封するという制限をいいます。

破産者宛の郵便物を開封することにより,当初の調査から漏れている債権者が発見されたり,また隠していた財産の存在が発覚することがたまにあり,実務上,重要な制度になっております。

例えば,年末の時期に,生命保険掛け金の控除証明書が届きますが,これが破産管財人へ転送されることにより,隠していた生命保険が発覚することもあります。

転送,開封後の郵便物について,破産管財人から返却を受けることができます。

ちなみに,通信の秘密の制限を受けるのは,破産者のみであるため,破産者と同居の親族,例えば,妻名義や子供名義の郵便物について,通信の秘密の制限を受けることなく,通常通り配達されることになります。また,あくまでも郵便物に対する制限であるため,クロネコヤマトや佐川急便の配達物が転送されるということはありません。

4 引致・看守

法律上,裁判所が必要と認めるときは,破産者の引致,看守を命じることができます。

ただ,現実に,破産者が引致,看守されるということはほぼありませんので,心配しなくてもよいでしょう。

資格の制限

破産法上の制限ではありませんが,一定の政策目的のため,特別法で個別に破産による公私の資格制限を設けております。

ご相談を受ける事案として多いのが,生命保険募集人及び損害保険代理店(保険業法),警備業者,警備員(警備業法),宅地建物取引業者,宅地建物取引主任者(宅地建物取引業法)が挙げられます。

また,弁護士,弁理士,公認会計士等資格に基づく職業などは資格制限がかかります。

その他,様々な資格制限があるため,特殊なご職業,地位,資格を有する場合,資格制限の有無について,個別に弁護士へ,ご相談ください。

なお,法人の取締役について,委任契約の終了事由(民法653条2号)にはなりますが,資格制限がかかることにはなりません。

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