2026/03/14
自己破産すると生命保険はどうなる?法人破産で代表者も破産する場合を弁護士が解説
自己破産すると生命保険はどうなる?法人破産で代表者も破産する場合を弁護士が解説
法人破産を検討している経営者の方から、よく次のような質問を受けます。
自己破産すると生命保険は解約されますか
家族のための保険は残せますか
医療保険やがん保険はどうなりますか
結論から言うと、自己破産をしても生命保険が必ず解約されるわけではありません。
自己破産では99万円までの財産を残すことが認められているため、生命保険を残せるケースもあります。
この記事では、法人破産で代表者も自己破産する場合の生命保険の扱いについて解説します。
法人破産でも代表者が契約者の生命保険は代表者個人の財産
法人破産をする場合でも、代表者が契約者の生命保険は代表者個人の財産として扱われます。
つまり、法人破産と代表者の自己破産を同時に行う場合でも、生命保険は代表者個人の破産手続の中で処理されることになります。
そのため、生命保険の扱いは
解約返戻金の金額
他の財産の状況
などを踏まえて判断されます。
自己破産では99万円まで財産を残せます
自己破産では、生活再建のために一定の財産を残す制度があります。
その根拠は、破産法に定められている自由財産の制度です。
破産法34条3項1号及び柱書では、次のように定められています。
「民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百三十一条第三号に規定する額に二分の三を乗じた額の金銭」は、破産財団に属しない。
ここで、民事執行法131条3号に規定する額は66万円です。
そのため
66万円 × 3/2 = 99万円
となり、自己破産では99万円までの現金は破産財団に属さず、手元に残すことができます。
解約返戻金が99万円以下なら生命保険を残せる
生命保険に解約返戻金がある場合でも、解約返戻金を含めた財産が99万円以下であれば残すことができます。
例えば次のような場合です。
解約返戻金 60万円
預金 20万円
この場合、合計80万円となるため、生命保険を残すことができます。
このように、自己破産をしても生命保険が必ず解約されるわけではありません。
掛け捨ての生命保険は自己破産しても残せます
生命保険には掛け捨て型の保険があります。
例えば
定期保険
医療保険
がん保険
などです。
これらの保険は解約返戻金がゼロまたはほとんどないことが多いため、財産価値がありません。
そのため、自己破産の手続でも解約返戻金ゼロの保険として、そのまま残すことができます。
解約返戻金が99万円を超える生命保険の扱い
生命保険の解約返戻金が99万円を超える場合、原則としてその超える部分は破産財団に組み入れられます。
もっとも、保険を残したい場合には、破産管財人と相談のうえで次のような対応が取られることがあります。
親族から援助を受ける
破産手続開始決定後に得た給与から支払う
などにより、99万円を超える部分を破産財団に組み入れることで保険を残せる場合があります。
例えば解約返戻金が150万円の保険の場合
99万円は残す
51万円を財団組入れ
という形で、生命保険契約を維持できるケースがあります。
もっとも、このような扱いが認められるかどうかは、破産管財人の判断や事案の事情によります。
契約者貸付を利用して生命保険を残す方法
生命保険には契約者貸付制度がある場合があります。
契約者貸付とは、解約返戻金の範囲内で保険会社からお金を借りる制度です。
この制度を利用して
契約者貸付を受ける
貸付金を代理人弁護士が預かる
ことで、解約返戻金を99万円以下に調整できる場合があります。
その結果、生命保険を解約せずに破産手続を進められるケースもあります。
もっとも、この方法が認められるかどうかは、破産管財人の判断や事案の状況によります。
破産前に生命保険を解約するのは注意
自己破産を検討している段階で
保険を解約する
解約返戻金を家族に渡す
といった行為をすると、問題になる可能性があります。
場合によっては
財産隠し
免責不許可事由
と評価されることもあります。
そのため、自己破産を検討している場合は、生命保険の扱いについて事前に弁護士へ相談することが重要です。
まとめ
自己破産と生命保険の関係をまとめると次のとおりです。
代表者が契約者の生命保険は代表者個人の財産として扱われる
自己破産では99万円まで財産を残すことができる
解約返戻金が99万円以下なら生命保険を残せる
掛け捨て保険は解約返戻金ゼロの保険として残せる
99万円を超える場合でも超過部分を財団組入れすることで残せる場合がある
契約者貸付を利用して解約返戻金を調整できる場合がある
生命保険の扱いは、解約返戻金や財産状況によって判断されます。
法人破産や自己破産を検討している場合は、生命保険の資料を用意して弁護士に相談することをおすすめします。
よくある質問(Q&A)
Q 自己破産すると生命保険は必ず解約しないといけませんか
必ずしも解約しなければならないわけではありません。
生命保険に解約返戻金がある場合でも、自己破産では99万円までの財産を手元に残すことができます。
また、解約返戻金が99万円を超える場合でも、破産管財人と相談のうえで超過部分を破産財団に組み入れることで保険を残せるケースもあります。
Q 医療保険やがん保険は自己破産するとどうなりますか
医療保険やがん保険などの掛け捨て型の保険は、解約返戻金がゼロまたはほとんどありません。
そのため、自己破産の手続でも解約返戻金ゼロの保険としてそのまま残すことができることが多いです。
Q 解約返戻金が100万円以上ある保険は必ず解約されますか
必ずしも解約されるとは限りません。
例えば、99万円を超える部分を破産財団に組み入れる方法や、契約者貸付を利用して解約返戻金を調整する方法などにより、保険を残せる場合があります。
具体的な対応については、破産管財人と相談しながら進めることになります。
この記事の執筆者
弁護士法人川端総合法律事務所
代表弁護士 川端 元樹
大阪弁護士会所属(登録番号32721号)
法人破産・個人事業主の債務整理を中心に、これまで多数の倒産案件を取り扱っています。