2013/01/16
従業員に対する対応
法人破産をする場合の従業員への対応
従業員の解雇、未払給与、離職票など必要な手続き
法人破産を検討している経営者の方から、「法人破産をすると従業員はどうなるのか」「従業員の解雇はどのように行えばよいのか」「未払給与や離職票の手続きはどうすればよいのか」といったご相談を多く受けます。法人や個人事業主が破産手続きを行う場合、事業を継続することができないため、従業員の解雇、未払給与の整理、離職票の作成、社会保険の資格喪失など、複数の労務手続きを進める必要があります。ここでは、法人破産の際に必要となる従業員対応の流れについて、実務上のポイントをわかりやすく説明します。
従業員の解雇手続き
法人や事業主が破産手続きを行う場合、通常は事業を継続することができないため、雇用している従業員について解雇の手続きを取る必要があります。
正式に弁護士へ破産を依頼するまでの間、例えば事前に弁護士へ破産相談を行い、弁護士介入日(破産準備開始のXデー)が決まっていたとしても、事前に従業員へ知らせると混乱が生じるおそれがあります。
具体的には、
・従業員の動揺
・取引先への情報漏えい
・売掛金の回収困難
などの問題が生じる可能性があります。
そのため、実務上はできる限り情報が漏れないように進めることが重要です。
そのうえで、破産手続開始日に従業員へ事情を説明し、会社が破産手続きを行わざるを得ない状況であることを説明したうえで解雇手続きを行うことになります。
解雇通知書の作成
従業員の解雇を行う際には、口頭で伝えるだけでなく、解雇通知書という書面を作成しておくことが望ましいです。
また、解雇通知を受けたことを明確にするため、あわせて解雇通知受領証を作成しておくことも一般的です。
これにより、
・解雇通知を行った事実
・解雇日
・従業員の受領確認
を明確にすることができます。
なお、解雇通知書および解雇通知受領証については、当法律事務所で作成し、お渡ししております。
源泉徴収票の作成
従業員を解雇する場合、解雇する年の1月1日から解雇日までの給与について源泉徴収票を作成し、従業員へ交付する必要があります。
源泉徴収票の作成については、
・顧問税理士へ依頼する
・会社代表者や事業主が作成する
いずれかの方法で対応します。
税理士費用の捻出が難しい場合には、会社代表者や事業主ご自身で作成する必要があります。
未払給与、退職金、解雇予告手当の計算
従業員を解雇する際には、
・未払給与
・退職金
・解雇予告手当
などの金額を計算しておく必要があります。
これは、実際に支払いができるかどうかに関わらず、破産手続上、労働債権額を把握するために必要な作業です。
なお、従業員を解雇する場合には、原則として
1か月前の解雇予告
または
1か月分の平均賃金(解雇予告手当)の支払い
が必要になります。
解雇予告手当は、直近3か月分の賃金を基礎として平均賃金を算出して計算します。
労務関係書類の確保・保存
従業員に関する以下の書類がある場合には、確保し保存しておく必要があります。
・給与明細
・賃金台帳
・従業員名簿
・退職金規程
これらの書類は、
・未払賃金立替制度の申請
・破産手続における労働債権額の確認
のために重要な資料となります。
従業員の未払給与の扱い
従業員の未払給与がある場合、法律上は労働債権として優先度が高い債権とされています。
そのため、会社に預貯金が残っている場合には、未払給与を支払っても問題ありません。
従業員は毎月の給与を前提に生活をしているため、給与の支払いが遅れると生活に大きな影響が生じることがあります。
未払給与がある場合は、可能な限り早めに支払いを行うことが望ましいです。
また、未回収の売掛金が入金される見込みがある場合には、売掛金の回収資金から従業員給与を支払うことも可能です。
実務上は、最後の1〜2か月分の給与が未払いになっているケースが多く見られますが、それより以前から給与が支払われていない場合には、どこまで支払うべきかについて個別の検討が必要になります。
未払賃金立替制度
従業員へ給与を支払うことができない場合、未払賃金立替制度を利用できる可能性があります。
この制度では、独立行政法人労働者健康安全機構により、未払賃金の8割(上限あり)まで立替払いが行われます。
ただし、この制度の対象となるのは
・正社員
・アルバイト
・パート
など、雇用関係にある従業員に限られます。
そのため、下請業者や職人への請負代金は対象外となります。
社会保険の資格喪失届
社会保険に加入している場合、事業所について
・健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届
・各従業員の資格喪失届
を年金事務所へ提出する必要があります。
この手続きを行わないと、従業員が
・国民健康保険
・国民年金
へ切り替えることができません。
そのため、速やかに手続きを行う必要があります。
離職票の作成と提出
離職票とは、解雇された従業員が雇用保険(失業給付)の手続きを行うために必要な書類です。
法人や事業主は、従業員を解雇した後、10日以内にハローワークへ
・雇用保険被保険者資格喪失届
・離職票
を提出する必要があります。
その後、ハローワークから
・離職票1
・離職票2
が交付されるため、これを従業員へ交付します。
従業員は離職票を受け取り、ハローワークで失業給付の手続きを行うことになります。
給与所得者異動届
従業員の住民税は、通常、給与から天引き(特別徴収)されています。
しかし、法人破産や廃業により給与支払いがなくなるため、各市町村へ給与所得者異動届出書を提出し、普通徴収(本人納付)へ切り替える手続きが必要になります。