会社の経営が立ち行かなくなったとき、最終手段として「法人破産」を検討する方も少なくありません。
しかし、「法人破産にはどんなデメリットがあるのか?」「自分(代表者)や従業員への影響は?」「費用がない場合でも手続きできるのか?」など、わからないことだらけで不安を抱えている方が大半です。
この記事では、法人破産のデメリットとメリットに焦点を当て、代表者や従業員への影響、破産後の生活までを解説します。
法人破産の主なデメリットとは?代表者・会社への影響まとめ
法人破産は会社経営が難しくなったときの解決策ですが、デメリットも存在します。
手続きによって代表者個人や会社の信用に大きな影響が出たり、再起が難しくなったりする可能性もあります。法人破産を検討する際には、メリットだけでなくデメリットも正しく理解しておくことが重要です。
会社の信用が失われる
法人破産は、会社が抱える債務を整理し、経営を立て直すための重要な手段の一つです。しかし、その手続きにはデメリットも伴います。特に、法人破産を行うと、会社の信用が大きく失われることが最大のデメリットとして挙げられます。
■ 法人破産による信用の喪失とは?
法人破産を行うと、まず最初に「破産手続きが行われた」という事実が、官報に掲載されることで公開されます。これにより、以下のような信用の喪失が発生します。
1.取引先からの信頼を失う
法人破産を行うと、取引先や顧客は、企業としての信頼性を疑うようになります。破産後に新たな取引を求める際、過去の破産歴がネックとなり、契約の締結や取引条件が不利になる可能性があります。
2.金融機関からの信用が失われる
金融機関にとって、過去に破産した企業との取引はリスクを伴います。そのため、破産後に新たな融資を受けることは非常に難しくなり、資金調達に大きな影響を与えます。これにより、事業再生を図るための資金調達が困難になります。
3.取引先との契約や取引の制限
破産を行った企業は、信用不安を招くため、新規の契約や取引を避けられることが多くなります。契約に基づいた支払い条件が厳しくなるほか、新たなビジネスチャンスを得ることが難しくなります。
4.再建の難しさ
破産後、会社の信用が失われると、「代表者等の再起」や「新規事業の立ち上げ」を目指すにも多くの障害が立ちはだかります。取引先や金融機関との信頼関係が薄くなるため、再起を図るために必要な支援が得られにくくなります。
■ 信用喪失を避けるためにできる対策
法人破産を選択する前に、信用喪失を最小限に抑えるための対策を考えることが重要です。以下のような対策があります。
1.早期の問題解決
破産手続きに進む前に、債務整理や事業再生の方法を専門家と相談し、最適な解決策を見つけることが大切です。早期に手を打つことで、企業の信用低下を防げる可能性があります。
2.情報公開の方法
破産をする場合でも、情報公開の方法を工夫することが求められます。破産後の対応として、代表者や関係者が新たな事業や活動で信頼を回復するための努力を行うことが大切です。
3.顧客や取引先への適切な説明
法人破産を行った際、取引先や顧客に対して誠実に説明し、将来的にどのように対応していくのかを伝えることが重要です。信頼回復に向けた取り組みをアピールすることで、一定の理解を得られる可能性もあります。
法人破産は、会社が抱える深刻な債務問題を解決するための手段ですが、そのデメリットとして会社の信用喪失があります。取引先や金融機関からの信頼を失うことは、事業再生において大きな障害となります。破産を選択する前に、信用喪失を最小限に抑える方法や再建の計画を十分に検討することが重要です。また、破産後は信頼回復に向けた努力を惜しまないことが、再起を果たすための鍵となります。
法人の有形無形の資産が消滅する
法人破産を進めると会社の有形・無形の資産が消滅することもデメリットとなります。この影響は、会社の財産や経営者の今後に大きな影響を与えるため、慎重に判断する必要があります。
1.有形資産が処分される
法人破産の手続きでは、まず会社の有形資産(不動産、設備、車両など)が処分され、債権者に分配されます。これにより、事業を再開するために使用できる資産が失われてしまうため、事業継続や再建が非常に難しくなります。
・不動産: 会社が所有している土地や建物は競売にかけられ、現金化されて債権者に分配されます。
・設備や機械: 事業に必要な設備も売却対象となり、資金として処理されるため、事業の再開には新たに設備を整える必要が出てきます。
2.無形資産の消失
無形資産とは、商標、特許権、取引先との契約、ブランド名など、会社の営業において重要な役割を果たしていたものを指します。これらの資産は、法人破産手続きにおいても、換価可能な場合は破産管財人により売却・換価され、債権者への配当に充てられます。売却できない場合や価値が認められない場合には、その価値が失われることもあります。
・ブランドや顧客基盤: 会社が築いてきた顧客との信頼関係やブランド力も消失し、事業の再起はほぼ不可能となります。
・知的財産権: 企業が持つ特許権や商標権などの知的財産権も、破産手続きの過程で失われることがあります。
3.経営者や関係者の信用情報への影響
法人破産を行うと、会社の代表者(経営者)や関係者の信用情報にも大きな影響が及びます。法人破産のみでは、代表者個人の信用情報に「破産」と記載されることはありません。ただし、代表者が連帯保証人等となっており、個人としても自己破産などの手続きを行った場合には、個人信用情報に登録され、金融機関からの借り入れが困難になることがあります。
4.従業員の雇用が保障されない
法人破産の際、会社はその負債を整理するために事業の一部または全てを縮小する必要があります。このため、従業員の雇用が継続される保証はなく、多くの場合、解雇や退職勧奨が行われることになります。これにより、従業員やその家族に深刻な影響を与えることとなります。
5.債務者としての責任の継続
法人破産を行っても、場合によっては代表者や関係者が個人的に負った保証債務が残ることがあります。特に、会社が借り入れをしている際に代表者が連帯保証人となっていた場合、破産手続き後もその責任を負う可能性があり、経済的な影響を受け続けることになります。
法人破産のデメリットは、単に会社の財産が失われることにとどまらず、経営者の信用や従業員の雇用にも大きな影響を与えます。それに関連して、無形資産の消失や会社の社会的評価の低下も、再起を困難にさせる要因となります。
代表者に保証債務が残ることがある
法人破産は、経営が行き詰まった企業にとって、借金問題を解決するための一つの方法ですが、手続きを進める中でいくつかのデメリットも存在します。その中でも特に注意すべき点は、法人破産をした場合、代表者個人に保証債務が残る可能性があることです。これは企業の経営者が個人として負っている責任が、法人破産後も解消されないことを意味します。
■ 法人破産後に代表者に残る保証債務
法人破産を行う際に、会社の借金を整理することが目的となります。しかし、会社が借り入れを行う際に、代表者が個人で保証をしている場合、その保証債務は法人破産手続きには含まれません。つまり、法人破産が成立しても、代表者はその保証債務を引き続き負うことになります。
保証債務が残る場合、代表者は個人で借金を返済しなければならないため、個人財産が差し押さえられるリスクもあります。これは特に、会社の規模が大きかったり、保証額が多かったりする場合に、代表者にとって大きな負担となります。
■ 代表者の保証債務が残る原因とリスク
1.代表者個人が借金の保証人になっている場合
多くの中小企業では、融資を受ける際に銀行や金融機関から保証人を求められ、代表者が個人で保証をすることがあります。この場合、法人破産後も保証債務は代表者に残り、返済義務が続きます。
2.連帯保証契約を結んでいる場合
代表者が連帯保証人になっている場合、破産後もその債務は消えません。債権者は法人ではなく、代表者に対して直接請求することができます。
3.個人資産の差押えリスク
法人破産により、会社の資産は清算されますが、代表者の個人資産が差し押さえられるリスクは依然として残ります。これにより、代表者は生活基盤を失う可能性もあります。
■ 代表者が取るべき対策
1.保証債務の見直し
法人設立時に代表者が保証人にならない形で契約を結ぶことが理想的です。できるだけ個人保証を避け、法人のみで借り入れができるようにすることが重要です。
2.早期の専門家相談
法人破産を考える際には、早めに弁護士や司法書士に相談し、保証債務をどう処理するか、再生の可能性があるかを検討することが必要です。保証債務の問題を適切に整理する方法を、早期に見つけることが重要です。
3.分割交渉や減額交渉を行う
代表者の保証債務が残る場合でも、債権者との交渉により分割払いにしてもらう、または一部減額を交渉することが可能な場合もあります。これを試みることも一つの方法です。
法人破産は、企業が経営困難に直面した際に有効な手段となりますが、代表者個人に保証債務が残ることについては、十分な注意が必要です。保証債務が残ると、個人財産にまで影響が及ぶため、法人破産を決断する前に、どのようにそのリスクを最小化するか、弁護士とよく相談しながら進めることが重要です。また、破産手続きを進める前に、代表者が保証債務に対してどのように対応するかを理解し、実績のある弁護士の無料相談を利用するなど、できる限り早期に対策を講じることが必要です。
法人破産の主なメリットとは?
法人破産は、経営が行き詰まった企業が選択する法的手段の一つです。この手続きを進めることで、企業が抱える負債を整理し、事業の再生や清算が可能になります。法人破産には、経営者や社員にとって多くのメリットがありますが、その中でも特に重要なポイントや知識、情報を押さえておくことが大切です。
負債の支払い義務が免除される
法人破産は、会社の経営が行き詰まり、もはや事業を続けられなくなった場合に選ばれる法的手段の一つです。
法人破産の最大のメリットは、法的な制度によって負債の支払い義務が免除されることです。具体的には、会社の破産手続きが終了し、会社が正式に解散となり、破産財団の処理が完了すると、残った負債については原則として支払い義務が免除されます。これは、会社が事業を続けることができない場合において、経営者や代表だけでなく、株主にとっても、非常に重要な意味を持ちます。
■ 主なメリット
1.会社の負債が免除される
法人破産によって、債権者に対する支払い義務が免除され、会社は債務超過から解放されます。これにより、会社の経営者は自分や家族の財産を守りながら、余計な負担から解放されることになります。
2.経営者の個人財産の保護
法人破産を通じて、原則として経営者の個人財産が会社の債務によって差し押さえられることはありません。ただし、経営者が会社の債務について個人保証をしている場合、その保証債務は法人破産後も残ります。個人保証債務を免除するには、経営者自身が自己破産等の手続きを行う必要がありますので、専門家に相談することが重要です。
3.新たなスタートを切ることができる
法人破産後、会社の負債は免除されるため、経営者は再スタートを切ることが可能です。過去の失敗から学び、また新たな事業を立ち上げることができるため、破産手続きが必ずしも終わりを意味するわけではなく、新しいチャンスを掴むきっかけともなり得ます。
4.事業の整理ができる
法人破産を通じて、事業の整理や清算が進められます。これにより、無理に事業を続けることなく、無駄なコストやリスクを排除し、社員の退職手続きや、設備の処分、資産の分配をスムーズに進めることができます。社員が将来に対する不安を抱えずに済むよう、適切な手続きを行うことができます。
5.債権者とスムーズな合意が可能
法人破産手続きが始まると、債権者は破産手続きに従うことになり、強制的な取り立てが停止します。これにより、債権者との交渉が円滑に進むため、経営者は焦らず冷静に問題解決を図ることができます。
税金についての対応は、滞納があり、支払いが困難な状況では、法人破産により会社が解散すると、原則として法人の税金の支払義務は免除されます。ただし、代表者が納税保証をしている場合や、無限責任社員・清算人等に「第二次納税義務」が課される場合など、例外的に支払義務が残るケースもあります。
一方、自己破産の場合においては、個人の税金は「非免責債権」として扱われるため、自己破産をしても税金の支払義務は免除されません。このように、税金の扱いは法人と個人で異なります。
法人破産の最大のメリットは、負債の支払い義務が免除されることであり、これによって経営者や会社は再スタートを切るだけでなく、生活や事業の再建が可能になります。法人破産は、事業が立ち行かなくなった場合の最終手段ではありますが、それ以上にその後の生活や未来を考えたとき、負債の整理を行い、早期に解決することが重要です。ただし、破産手続きには法律的な複雑さも伴うため、専門家である弁護士に相談し、適切な手続きを進めることが大切です。
債権者からの取り立てや督促が止まる
法人破産は、会社が抱える多額の借金を整理するための手続きであり、経営者のみならず、従業員にとっても、重要な決断となります。しかし、法人破産のメリットの一つとしては、債権者からの取り立てや督促が止まる、ということがあげられます。これは、企業の再生や新たなスタートを切るための大きな利点です。
法人破産を申し立てると、会社に対する債権者からの取り立てや督促が停止します。これにより、次のようなメリットが得られます。
1.精神的な負担の軽減
債権者からの電話や通知、訪問によるプレッシャーから解放され、経営者は精神的な負担を軽減できます。取引先や従業員への対応に集中できる環境が整い、会社の再建や清算に向けて冷静に判断できます。
2.事業活動の継続が可能
取り立てや督促が続くと、事業活動に支障をきたすことが多いです。法人破産後は、これらの行為が停止するため、経営者は事業の運営に専念し、必要な場合はスムーズに整理や清算が進められます。
3.債務整理の余裕を得られる
破産手続の開始が決定されると、債権者の要求に対して一度立ち止まって対応できるようになります。これにより、債務整理に必要な時間と余裕を確保し、過去の財務問題を整理することが可能です。
4.法的保護を受ける
法人破産手続が開始されると、債権者による強制執行(例えば、差し押さえや財産の売却)が一時的に停止します。これにより、企業の資産を守り、余計な負担を避けることができます。
■ 法人破産後の取り立てや督促の停止の流れ
法人破産手続きが開始されると、次のような法的効力が発生します。
1.受任通知の送付
破産手続の申立を弁護士に依頼した場合、弁護士が「受任通知」を債権者に送付します。受任通知には法律上、強制力はありませんが、実務上、債権者は弁護士を窓口として請求を控えることが一般的です。
2.強制執行の停止
裁判所が破産手続き開始決定を出すと、債権者は強制執行を行うことができなくなり、差し押さえなどの行為が停止します。このため、企業の営業や従業員の給与支払いなどを進めやすくなります。
3.交渉の窓口を統一
法人破産後は、弁護士や破産管財人が債権者との交渉を行います。これにより、経営者が直接交渉することなく、専門家を通じて整理を進められるため、負担を軽減できます。また、必要な書類の作成や手続を代行します。
取り立てや督促によるストレスを軽減し、法的な側面からサポートを受けることで、企業は新たなスタートを切るための準備ができます。これにより、経営者は冷静に次のステップを踏むことができ、会社の再建や清算に向けて集中できる環境が整います。
経営者が精神的な負担から解放される
法人破産は、経営が困難な企業にとって、最終的に選択せざるを得ない手続きの一つです。しかし、法人破産には経営者にとって多くのメリットもあります。特に、破産手続きによって精神的な負担から解放されることは、大きな利点です。経営者が抱える精神的な重圧や悩みが軽減されることで、次のステップへ進むための力を得ることができます。
■ 法人破産による精神的負担の解放
1.債務の圧迫から解放される
経営が困難な状態で借金が膨らんでいる場合、債務の返済や取り立てが、経営者にとって精神的に大きな圧力となります。法人破産によって、これらの債務が法的に整理され、経営者は債務の返済から解放されます。これにより、日々のストレスから解放されるとともに、冷静に次の行動を考える余裕が生まれます。
2.債権者との交渉から解放される
多くの企業は、取引先や金融機関との間で支払い交渉を繰り返しながら経営を続けていますが、その過程で経営者は疲弊しがちです。法人破産によって、これらの交渉を弁護士に任せることができ、債権者との面倒なやり取りから解放されます。このことが、精神的な負担を大幅に軽減します。
3.取り立て行為の停止
自己破産の手続きが開始されると、法的に債権者からの取り立て行為が停止します。これにより、経営者は夜間に電話がかかってきたり、営業先で嫌がらせを受けることなく、精神的に落ち着いた生活を送ることができます。これらの外部からのプレッシャーを回避できることは、破産手続きの大きなメリットです。
■ 法人破産後に経営者が得られる精神的な安定
1.生活の再建に集中できる
法人破産を経て、経営者は新たな生活を始めるために必要な時間とエネルギーを取り戻すことができます。負債や経営の悩みから解放されることで、次に進むための力を養い、将来に対する不安を減らすことができます。
2.新しいビジネスや事業活動の再出発
破産後、再度ビジネスを始める意思がある場合、破産手続きによって過去の失敗を一新し、リセットすることができます。経営者は、新たな挑戦に集中できるようになり、前向きな気持ちで事業に取り組むことが可能です。
法人破産の最大のメリットの一つは、経営者が精神的な負担から解放されることです。膨大な借金や債権者からの取り立てに追われる日々から解放されることで、冷静に次のステップを考える余裕が生まれ、再スタートを切るためのきっかけを得ることができます。
トラブルを防ぎ、法的に安全な手続きができる
破産手続きは、会社が抱える負債を整理し、事業の再建または清算を進めるための重要な方法であり、適切に進めることで経営者や社員を不必要なトラブルから守ることができます。
■ 法人破産の主なメリット
1.負債整理が法的に進められる
法人破産を行うことで、法人が抱える債務を法的に整理することができます。通常、破産手続きにより法人の返済義務は消滅しますが、代表者や第三者が連帯保証人となっている場合、その保証債務は引き続き残る点に注意が必要です。また、租税債権や未払賃金など一部の債権は、破産手続きにおいても優先的に支払われます。
2.取り立ての停止
弁護士に法人破産を依頼すると、弁護士から債権者に「受任通知」が送付されます。この通知によって、主に貸金業者など一部の債権者は取り立てを停止しますが、すべての債権者に法的な効力が及ぶわけではありません。法的にすべての債権者による取り立てが禁止されるのは、裁判所による破産手続開始決定後となります。これにより、経営者や従業員が不安なく手続きを進めることができます。
3.経営者の個人資産を守る
法人破産では、法人の財産を使って債務整理が行われます。個人の保証債務を除き、通常は法人と個人の資産は分けて扱われるため、経営者の個人財産が不当に取り扱われることを防げます。
4.事業再建の道が開ける
法人破産には、単なる清算だけでなく、再生型の手続き(会社更生や民事再生)もあります。状況によっては、事業の一部を残して再建を図ることも可能です。
5.法的な負担を軽減できる
法人破産は法的に整った手続きであり、司法書士や弁護士が介入するため、トラブルや不正が発生するリスクを最小限に抑えることができます。
6.長期的な経営者の生活再建を支援
法人破産後、経営者が新たなスタートを切るためには、借金問題を早期に解決することが不可欠です。破産手続きを経て、生活やビジネスの新たな出発点を見つけることができるため、経営者自身の生活再建にもつながります。
法人破産の最大のメリットは、経営者や従業員にとって「法的に安全で公正な手続きを行えること」です。自力での解決が難しい場合において、裁判所を通じて適切な整理を行うことは、最もリスクが少なく確実な方法と言えます。
早期に再スタートを切る準備ができる
法人破産は、経営が困難になった企業が選択する法的手続きの一つですが、必ずしも「最終手段」ではなく、むしろ早期に再スタートを切るための重要な手段となり得ます。破産手続きを通じて、企業は負債の整理や清算を進めることができ、経営者や社員が新たな一歩を踏み出すための準備が整います。
1.負債の免除や整理が可能
法人破産の最大のメリットは、企業が抱える負債を法的に整理し、清算することができる点です。破産申立てをすることで、負債が免除されるため、事業の再建を行うための足掛かりを得ることができます。経営者や株主に対しての債務責任が軽減され、事業を完全に清算し、新たなスタートを切る準備ができるのです。
2.事業の整理・閉鎖が迅速に進む
法人破産を申請することにより、会社の資産や負債の整理が開始され、事業の閉鎖や清算手続きが迅速に進みます。特に、従業員の雇用契約や賃金の問題を早急に処理できるため、会社の混乱を最小限に抑えつつ、次のステップへ進むことができます。
3.財務上のリセットが可能
法人破産は、会社の財務状況をリセットするための手段です。過剰な負債を抱えて経営が困難になった場合、その負担から解放されることで、会社は再生可能な状態に戻ることができます。これにより、経営者は新たに事業を再開する際に過去の負債の重圧に悩まされることなく、スムーズなスタートを切ることができます。
4.信用情報の整理
法人破産を通じて、過去の信用問題が整理されます。破産後は「再建信用」を築き直すことができ、再スタートを切った企業が健全な財務基盤を築いていくための足掛かりとなります。特に、新たな資金調達や取引先との契約など、信用情報を清算することで、将来の経済活動がスムーズに進みやすくなります。
5.法的保護を受けながら事業の整理ができる
破産手続きにおいては、法的に債権者からの取り立てが停止されます。これにより、企業は経営に専念し、適切に事業の整理や清算を行うことができるため、余計なプレッシャーを受けずに再スタートの準備を進めることが可能となります。
■ 早期再スタートに向けた準備
法人破産の手続きを早期に進めることで、企業は以下のように再スタートを切る準備を整えることができます。
1.新たな事業の立ち上げがしやすくなる
負債整理が完了すれば、経営者は新しい事業に取り組むための自由を得ることができます。過去の経営から学び、再度事業を立ち上げる準備が整います。
2.再建に向けた資金調達の可能性
法人破産後に企業が新たに事業を始める場合、再建資金を調達することが比較的スムーズになります。金融機関や投資家からの支援が受けやすくなり、健全な事業運営を行うことができます。
3.社員の再雇用や再教育
破産手続きを経て、社員の再雇用や再教育を行うことができます。新しい事業を始める際には、適切な人材の確保と再教育が重要です。
法人破産は一見ネガティブに捉えられることが多いですが、実際には企業が再生に向けて進むための重要なステップであり、早期に適切な手続きを行うことが、将来的な成功につながる可能性があります。破産手続きは経営者や従業員にとって負担が大きいものですが、その後の再スタートを切るためには重要な準備となるのです。
まとめ
法人破産は、企業が経営の行き詰まりや負債の返済が不可能となった場合に、法律的に借金を整理し、事業を清算する手続きです。法人破産には、企業や経営者にとって重要なメリットもあれば、逆に慎重に検討しなければならないデメリットも存在します。
また、「破産」とよく似た言葉として「倒産」という言葉があります。倒産とは、企業が支払い能力を失い、借金や債務の返済ができなくなる状態を指します。主に「法的倒産」として法人破産や民事再生などの法的手続きが行われる場合や、「経済的倒産」として資金繰りが悪化し経営が立ち行かなくなる状態があります。倒産は企業の経営終了や再建のきっかけとなります。
「法的倒産」には民事再生という手続き以外に、「会社更生」「特別清算」といった手続きの種類があり、「法人破産」は「法的倒産」の方法の一種です。
■ 法人破産のデメリット
1.会社の信用が失われる
法人破産を行うと、会社の信用は失われ、今後は他の取引先や金融機関からの信頼を得るのは非常に難しくなります。また、会社の商号や事業内容が公に通知されるため、社会的評価が下がります。
2.株主や代表者の責任が問われる場合がある
法人破産が行われても、経営者や代表者が不正行為や違法行為を行っていた場合には、破産後に個人的な責任を問われることがあります。特に、役員が債務不履行や詐害行為をしていた場合、刑事責任や損害賠償を負うことがあります。
3.従業員の雇用問題
破産手続き中、従業員は解雇されることが多く、再就職を支援するための措置も必要となります。従業員への給与の未払いが発生する場合もあり、社会的な問題に発展することもあります。
4.資産の換価処分
破産手続き中に会社の資産(不動産、設備、在庫など)は換価され、債権者への支払いに充てられます。そのため、企業が保有していた資産を手放すことになります。
5.法人の再生が難しい
法人破産後は、原則として会社は清算され、その再建や再生は非常に難しくなります。事業の一部や資産の売却などで再生する可能性もありますが、原則として事業は終了となります。
■ 法人破産のメリット
1.法人の負債整理
法人破産を行うことで、会社が抱えている借金は法人として免除され、債権者からの取り立てや催促が停止されます。ただし、代表者や第三者が連帯保証人等になっている場合、その保証債務は法人破産後も残るため、個別に対応が必要です。
2.会社の清算ができる
破産手続きを進めることで、会社の資産を整理し、債権者への分配を行うことができます。この過程で会社を合法的に清算でき、事業を終了することが可能となります。
3.経営者の再スタートの可能性
破産手続きが完了すると、法人の債務からは解放されますが、代表者個人が保証債務等を負っている場合は、その債務についても別途整理(自己破産など)が必要です。これらの債務整理が完了すれば、新たに事業を立ち上げる際に過去の借金の影響を受けにくくなります。
4.一時的な法的保護
破産手続き開始と同時に、債権者からの取り立てや訴訟が一時的に停止されるため、企業は余裕を持って手続きを進めることができます。
5.事業の一部譲渡の可能性
法人破産後、会社の資産や事業の一部を第三者に譲渡することで、事業自体が他の会社などで継続される場合もありますが、法人自体は原則として消滅します。
法人破産は、会社の経営が困難な場合に最終手段として選ばれる手続きですが、メリットもデメリットも存在します。負債の整理や法的保護といったメリットがある一方で、会社の信用失墜や従業員の雇用問題などデメリットも多いため、慎重に判断する必要があります。破産を決断する前に、弁護士や専門家に相談し、他の選択肢(事業再生、債務整理など)も検討することが重要です。
川端総合法律事務所では、法人破産を専門とした事務所であり、資金繰りに悩まれている社長の方や、廃業をお考えの取締役の方からのご相談を、無料にて受付しています。法人破産は、早い段階でのご相談が重要です。まずはお気軽に、メールやお電話にてご相談ください。