連帯保証人、家族への影響

連帯保証人制度とは、借主が債務を履行できない、つまり返済できない場合に、その責任を負う人を指定する仕組みです。主に賃貸契約や金銭借入の際に利用され、借主の信用を補完する役割を果たします。連帯保証人は、借主と同等の責任を負うため、債務不履行時には借主に代わって支払いを求められます。 連帯保証人制度は借主の信用を高める一方で、保証人にとってはリスクの高い立場となります。そのため、近年では家賃保証会社の利用など、代替手段も増えています。連帯保証人制度を理解することは、安全な契約締結の基本となります。特に親子間や夫婦間など親族の連帯保証人を引き受ける場合は、将来的な家族関係への影響も考慮すべきでしょう。事情によっては友人から依頼されることもあるかもしれません。 家族が連帯保証人になることも多く見られますが、これには慎重な検討が必要です。この記事では特に、家族や配偶者が法人や、その代表者の連帯保証人になっている場合について、その影響を解説します。

連帯保証人の基本的な役割とは?

連帯保証人の基本的な役割は、主たる債務者が債務を履行できない場合、つまり借金をした人が借金を払えない場合に、その債務を肩代わりして支払う義務を負うことです。例えば賃貸借契約においては、借主が家賃を滞納した際に、連帯保証人が家賃の支払いを行う責任を負います。連帯保証人は、債権者から請求があれば、主たる債務者と同等の責任を負うため、債権者は主たる債務者に請求することなく、直接連帯保証人に支払いを求めることができます。 また、連帯保証人は主たる債務者の返済能力や信用力を補完する役割も果たします。これにより、主たる債務者が単独では契約を結ぶことが難しい場合でも、取引や契約を可能にする機能を持っています。ただし、連帯保証人になることは重大な責任を伴うため、家族が何らかの形で連帯保証人になることについては慎重に検討する必要があります。連帯保証人は、主たる債務者の支払い能力や信頼性を十分に把握した上で、自身の経済状況も考慮しながら引き受けるべきです。

連帯保証人の法的責任と義務

連帯保証人の法的責任と義務については、基本的に債務者が債務を履行できない場合に特に重要となります。連帯保証人は、主たる債務者と同等の責任を負うため、債権者は債務者に請求することなく、直接連帯保証人に全額の支払いを求めることができます。このポイントが通常の保証人との大きな違いです。 連帯保証人は、債務者が支払いを怠った場合、即座に全額を支払う義務があります。また、債権者からの請求に対して、債務者に先に請求するよう求める権利(催告の抗弁権)や、債務者の財産から弁済を受けるよう要求する権利(検索の抗弁権)を持ちません。 さらに、連帯保証人は債務者の返済状況を把握し、必要に応じて債務者に代わって支払いを行う責任があります。債務者が破産した場合でも、連帯保証人の責任は消滅せず、全額の支払い義務が継続します。 このように、連帯保証人の法的責任と義務は非常に重大であり、慎重に検討する必要があります。家族間で連帯保証人を引き受ける場合も、これらのリスクを十分に理解し、将来的な影響を考慮することが重要です。

通常の保証人との違い

連帯保証人通常の保証人には、重要な違いがあります。一般的に、通常の保証人は、債務者が支払いを行わない場合にのみ責任を負いますが、連帯保証人は債務者と同等の責任を負います。つまり、連帯保証人は債務者が支払えない場合、即座に全額の支払い義務を負うことになります。 また、通常の保証人には「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」がありますが、連帯保証人にはこれらの権利がありません。催告の抗弁権とは、債権者が最初に債務者に請求するよう求める権利であり、検索の抗弁権とは債務者の財産から先に回収するよう求める権利です。 連帯保証人は、債権者からの請求に対して即座に応じなければならず、債務者の支払い能力を確認する猶予もありません。このため、連帯保証人の責任は通常の保証人よりも重く、リスクも高いと言えます。家族が連帯保証人になる場合も、この点を十分に理解しておく必要があります。

連帯保証人への影響

法人の連帯保証、法人の代表者の連帯保証人、個人事業主の連帯保証人になっている方がいる場合、法人、代表者、事業主が破産手続きに入ると、債権者から連帯保証人に対し、一括請求が行われることになります。 連帯保証人は、主債務者が支払いできなくなった場合、代わりに支払いをしてもらうという担保制度になるため、まさに破産のようなケースに支払いが求められることになるのです。 そのため連帯保証人は、一括請求に応じて債権者へ支払いを行わないといけませんが、一括での支払いが難しい場合、債権者と交渉を行い長期分割での支払いができないかを調整していくことになります。 ただ、法人、事業主への事業融資であれば、数百万から数千万円、場合によっては億を超える等、高額になることが多いでしょう。 このような場合、連帯保証人としても支払いをすることができず、連鎖倒産という形で自己破産を検討せざるを得ない場合も少なくありません。 連帯保証人の方が自分名義で不動産等、特に大きな財産を持っていない場合は破産をしても大きなデメリットはありません。 これに対し、自宅がある場合、破産をすると売却しないといけないため、個人再生を行うことができるのか、連帯保証債務を支払う方向で調整をしないといけないという可能性もあります。

連帯保証人が支払えない場合の対処法

連帯保証人が支払えない場合、まず債権者と交渉し、支払い計画の見直しや分割払いなどの柔軟な対応を求めることが重要です。それでも解決が難しい場合は、法的な対処方法を検討する必要があります。個人再生や自己破産などの債務整理の選択肢があり、状況に応じて適切な方法を選ぶことが大切です。 また、財産の差し押さえを防ぐためには、早めの対応が不可欠です。債権者との交渉や法的手続きを進める間、差し押さえを一時的に止める方法もあります。連帯保証人が支払いに困った際の相談先として、弁護士や司法書士、法テラスなどの専門機関があります。これらの専門家に相談することで、適切な対処法についてのアドバイスや法的なサービスを受けられる可能性があります。 状況に応じて、連帯保証人の解除や債務の一部免除を求めることもあります。いずれの場合も、早い段階で法律の専門家に相談し、適切な対応を取ることが重要です。

財産の差し押さえを防ぐ方法

連帯保証人が債務を支払えない場合、財産の差し押さえを防ぐ方法を考えます。まず、債権者との交渉を試みることが重要です。分割払いや支払い期限の延長などの条件変更を提案し、合意を得られれば差し押さえを回避できる可能性があります。 任意整理特定調停の利用も検討します。これらの手続きを通じて、債権者と話し合いながら返済計画を立てることで、差し押さえを防ぐことができます。 個人再生自己破産などの法的手続きを検討することも選択肢の一つです。個人再生では、一定期間内に返済計画を立てて債務を返済することで、財産の差し押さえを回避できます。自己破産の場合は、債務が免除される代わりに一部の財産が処分されますが、状況次第では差し押さえを回避できるものもあります。 いずれの方法を選択する場合も、早期に専門家に相談することが重要です。

債務整理の選択肢(個人再生・自己破産)

債務整理は、連帯保証人が支払い不能に陥った際の最後の手段として考えられます。個人再生自己破産は、その代表的な選択肢です。個人再生は、一定の安定した収入がある場合に適しており、債務の一部を返済しながら残りを免除してもらう方法です。債権者との合意のもと、3年から5年程度の返済計画を立て、その間は給与差し押さえなどの強制執行を停止できます。一方、自己破産は、債務の返済が全く不可能な場合に選択されます。裁判所の決定により、債務が免除されますが、住宅や不動産を処分しなければならないだけでなく、信用情報に記録が残り、新たな借り入れが困難になるなどのデメリットもあります。どちらの方法も、法的な手続きが必要となるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談することが重要です。これらの選択肢は、連帯保証人の責任を軽減する可能性がありますが、主債務者との関係性や社会的信用にも影響を与える可能性があるため、慎重に検討する必要があります。

連帯保証人が自己破産した場合の影響

連帯保証人が自己破産した場合、その影響は債権者と債務者の双方に及びます。まず、連帯保証人の自己破産により、その保証債務は免責されることになります。つまり、連帯保証人は法的に債務から解放されるのです。しかし、これは主たる債務者の債務、つまり元々借りた借金の金額には影響を与えません。債権者は引き続き主たる債務者に対して債務の履行を求めることができます。 一方で、債権者にとっては、連帯保証人からの回収が不可能になるため、債権回収のリスクが高まります。このような状況下では、債権者は主たる債務者に対して、より厳しい対応を取る可能性があります。例えば、残る債務の一括返済を求めたり、担保物件の処分を進めたりする場合があります。 また、連帯保証人の自己破産は、主たる債務者の信用にも影響を与える可能性があります。金融機関や取引先は、連帯保証人の破産を主たる債務者の信用リスクの増大と捉える可能性があるからです。これにより、新規の融資や取引に支障が生じる可能性があります。 このように、連帯保証人の自己破産は、債務関係全体に大きな影響を与える可能性があります。そのため、連帯保証人になる際には、このようなリスクも考慮に入れる必要があります。

自己破産をした場合の配偶者への影響

自己破産をした場合の家族への影響、特に配偶者への請求がいくかどうかは、配偶者が連帯保証人になっているかによります。 例えば、夫が法人の代表者で、法人、代表者ともに破産をすることになったとしても、妻が法人、夫のいずれも連帯保証をしていなければ、債権者から妻へ請求がいくということは一切ありません。 これに対し、配偶者が連帯保証をしているような場合、たとえ離婚をしても、連帯保証債務から逃れることができず、連帯保証人として、支払いを求められることになります。 よくある質問として、法人、代表の夫が破産するにあたって、「夫婦が離婚をしておいた方がよいでしょうか」と聞かれることがありますが、それ以前の連帯保証をしていたかによって、妻への影響が決まりますので、破産と離婚は関係がなく、離婚をしておく必要は特にありません。

連帯保証人を辞めるには?

では、連帯保証人を辞めたい解除したいと思ったときには、どのようにすればよいのでしょうか。 連帯保証人を辞めるには、債務者と債権者の双方の同意が必要です。その流れとしてはまず、債務者に連帯保証人を辞めたい旨を伝え、新たな連帯保証人を探してもらうことが重要です。債務者の協力が得られれば、債権者に対して連帯保証人の変更を申し出ることができます。 債権者の同意を得るためには、新たな連帯保証人の信用力が十分であることを示す必要があります。また、債務の返済状況が良好であることも、債権者の同意を得やすくする要因となります。 ただし、債権者が連帯保証人の変更に同意しない場合もあります。その場合、債務者に借り換えを検討してもらうなど、別の方法を模索する必要があります。 連帯保証人を辞める際は、書面で合意を交わすことが重要です。これにより、将来的なトラブルを防ぐことができます。また、連帯保証人を辞めた後も、辞める前に発生した債務については責任を負う可能性があるため、注意が必要です。 家族が連帯保証人になっている場合、感情的な問題も絡むため、さらに慎重に対応しなければなりません。

連帯保証人の解除方法と必要な手続き

連帯保証人の解除には、債権者の同意が必要不可欠です。 特に、法人や代表者との連帯保証人を解除するためには、次のような方法があります。 1.債権者との合意で解除する方法-金融機関などの債権者と交渉して、連帯保証を解除してもらう。新しい連帯保証人を用意することで、解除が認められる場合もあります。 2. 借入金を返済して解除する方法-借入金をすべて返済して、主債務を消滅させる。他のローンに借り換えて、元の借入金を返済することが可能な場合もあります。3.連帯保証契約の無効や取消しを主張する方法-契約に問題がある場合、無効や取消しを主張できる可能性があります。 4.「経営者保証ガイドライン」を利用する方法-一定の条件を満たすことで、事業承継時に経営者の個人保証を解除できることがあります。5.法人と経営者の関係を明確に分離する方法-法人と経営者の資産や経理をしっかり分ける。経営の透明性を高めるために、適切な情報開示を行う。 また、賃貸借契約の場合でもやはり、まずは家主や不動産会社に連絡を取り、解除の意向を伝えます。その際、新たな連帯保証人や家賃保証会社の利用を提案すると、交渉がスムーズに進む可能性が高まります。 解除の手続きには、連帯保証人変更契約書の作成が必要です。この書類には、現在の連帯保証人、新しい連帯保証人(または家賃保証会社)、そして債務者本人の署名が求められます。連帯保証人を解除するに当たっては、債務者の信用状況や支払い履歴なども考慮されるため、滞納がないことが重要です。 住宅ローンなど金融機関のローンの場合は、銀行に直接相談し、連帯保証人の変更や解除の可能性を確認します。この場合、債務者の返済能力や信用状況を証明をするため、再審査が行われる可能性があります。 いずれの場合も、解除の手続きには時間がかかることがあるため、余裕を持って対応することが大切です。また、解除が認められない場合に備えて、代替案を用意しておくことも賢明です。

連帯保証人が支払いを拒否できる場合

連帯保証人が支払いを拒否できる場合は限られていますが、いくつかの状況下では可能性があります。例えば、主債務者である借主が債務を完済している場合や、債権者が法的手続きを経ずに直接連帯保証人に請求してきた場合などが挙げられます。また、連帯保証契約に瑕疵がある場合、例えば詐欺や脅迫によって契約させられた場合も、支払いを拒否できる可能性があります。 時効の援用も考えられます。債権の消滅時効期間が経過し、連帯保証人がそれを援用すれば、支払い義務を免れる可能性があります。ただし、これらの状況においても、単純に支払いを拒否するのではなく、法的な手続きを踏む必要があります。 重要なのは、連帯保証人が支払いを拒否する正当な理由がある場合でも、適切な方法で対応することです。無闇に支払いを拒否すると、法的な問題に発展する可能性があるため、専門家のアドバイスを受けることが賢明です。

連帯保証人のリスクを最小限に抑える方法

連帯保証人のリスクを最小限に抑えるためには、対策を講じることが必要です。まず、契約内容を十分に理解し、保証の範囲や期間を明確にすることが重要です。可能な限り、保証額の上限を設定することで、予期せぬ高額な支払いを回避することができます。また、主債務者の返済能力や信用状況を事前に確認し、リスクを評価することも大切です。 定期的に主債務者の返済状況や契約書を確認し、問題が発生した場合には早期に対応することで、被害を最小限に抑えることができます。さらに、自身の財産を守るために、一部の資産を保証対象外とする特約を結ぶことも検討すべきです。 万が一の事態に備えて、保証人保護制度保証保険などのセーフティネットを活用することも有効です。これらの制度を利用することで、リスクを分散し、経済的な負担を軽減できる可能性があります。 連帯保証人になる前には、専門家に相談し、法的なアドバイスを受けることをおすすめします。

連帯保証人のトラブルを回避するための予防策

連帯保証人についてのトラブルを回避するためには、事前の十分な準備と理解が不可欠です。まず、連帯保証人の責任と義務について、家族間で十分に話し合い、互いの理解を深めることが重要です。契約内容を細かく確認し、不明点があれば必ず会社の役員や代表、不動産会社など相手に質問しましょう。また、債務者の支払い能力を客観的に評価し、無理のない範囲で保証を引き受けることが大切です。 さらに、債務者の収入状況や生活状況を定期的に確認し、支払いに問題がないか注意を払うことも有効です。万が一の事態に備えて、連帯保証人自身も一定の貯蓄を確保しておくことも検討しましょう。また、保証期間や保証限度額を設定するなど、リスクを軽減する方法もあります。 トラブルが発生した場合に備えて、法律相談や専門家への相談ルートを事前に確保しておくことも重要です。家族間での連帯保証人の場合、感情的な問題が絡みやすいため、冷静な判断ができるよう、第三者の意見を求められる環境を整えておくことも有効な予防策となります。

まとめ

連帯保証人制度とは、借主が債務を履行できなくなった場合に、その債務を代わりに支払う義務を負う仕組みです。この制度は賃貸契約や借入契約などで主に利用され、借主の信用を補強する役割を果たしています。 連帯保証人の法的責任と義務は非常に重く、債権者から直接請求される場合、借主と同じ責任を負います。さらに、連帯保証人には「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」がないため、支払いを拒否する権利も大幅に制限されています。 この連帯保証人を解除するには、債権者の同意が必須であり、解除手続きには注意が必要です。 リスクを最小限に抑えるためには、契約内容を十分に理解し、保証範囲や保証期間を明確にすることが大切です。親や誰かの連帯保証人になっている場合や、不安やお悩みがある方は、ぜひ川端総合法律事務所にお気軽にご相談いただきたいと思います。
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