会社が倒産した場合、突然の収入源の喪失に不安を感じることでしょう。頭が真っ白になっているかもしれません。突然のことに、今後の生活や家族のこと、そして再就職への不安で、胸が締め付けられているのではないでしょうか。
そのような状況において、失業保険(雇用保険)は重要なサポートとなります。しかし、会社倒産時に失業保険がいくらもらえるのか、またその手続きはどう進めるべきかを知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、会社が倒産した場合に受け取れる失業保険の金額や、手続きの流れについてわかりやすく解説します。
【最優先】倒産後に今すぐやるべきことチェックリスト
会社の倒産という緊急事態に直面した今、まずは落ち着いて、このチェックリストをしっかり確認することから始めましょう。適切な手続きを速やかに行うことで、あなたの生活を守るための保障をスムーズに受け取ることができます。
STEP1:離職票の受け取りと確認
会社から「雇用保険被保険者離職票-1」と「離職票-2」を受け取り、内容を確認します。
倒産の場合、発行が遅れる可能性があります。状況に応じて会社の人事担当者、またはハローワークに相談しましょう。
STEP2:未払い賃金の確認と立替払制度の検討
未払いとなっている給料や退職金がないか確認してください。
「未払い賃金立替払制度」の対象となる可能性があります。詳細は後述します。
STEP3:ハローワークでの求職申込み
離職票が手元に届いたら、お住まいの地域を管轄するハローワークへ向かいましょう。
この手続きが、失業保険(雇用保険の基本手当)受給の第一歩です。
STEP4:失業保険の申請準備
ハローワークで申請に必要な書類(身分証明書、写真、銀行通帳など)を確認し、準備を進めます。必要書類を早めに揃えておくと、給付開始がスムーズになります。
STEP5:各種減免制度の確認
国民健康保険や国民年金保険、住民税など、失業を理由とした減免・猶予制度があります。市区町村の窓口で相談し、負担軽減策がないか確認しておきましょう。
STEP6:家計の見直しと支出削減
現在の収入と支出を正確に把握することが重要です。
無駄な出費を洗い出し、削減できるものがないか確認してください。
STEP7:必要に応じて専門家への相談
労働問題に詳しい弁護士や社会保険労務士、社会福祉協議会など、頼れる専門家はたくさんいます。一人で抱え込まず、積極的に相談することも大切です。
失業保険の基本:「いくら・いつから・いつまで」もらえる?
会社が倒産し、職を失ったあなたにとって、失業保険が「いくらもらえるのか」「いつから受け取れるのか」「いつまで続くのか」は、何よりも知りたいことでしょう。ここでは、その疑問に一つずつお答えしていきます。
倒産は「会社都合退職」で手厚い保障を受けられる
会社の倒産による退職は、雇用保険制度上「特定受給資格者」に該当します。これは、あなたの意思に関わらず会社都合で退職を余儀なくされた場合に適用される区分です。自己都合退職と比べて、手厚い保障が受けられるという大きな特徴があります。
・給付制限期間がない
自己都合退職では失業保険の給付開始まで2〜3ヶ月の待機期間があるのに対し、倒産による退職では7日間の待機期間後、すぐに給付を受けられます。収入が途絶えた状況で、この違いは計り知れないほど大きな安心材料となるはずです。
・給付日数が大幅に優遇される
自己都合退職では最大150日程度の給付日数ですが、会社都合退職では年齢や雇用保険の加入期間に応じて90日〜330日まで延長されます。特に45歳以上で雇用保険加入期間が10年以上ある方なら、最大270日〜330日間と、再就職活動にじっくりと時間をかけられる期間が確保されます。
・国民健康保険料の軽減措置
倒産による離職者は「非自発的失業者」として認定され、国民健康保険料が最大2年間、前年所得を30%として計算される特例があります。これにより、保険料の負担を大幅に減らすことが可能です。
失業保険の金額はいくら?直近6ヶ月の給与から計算される仕組み
失業保険の給付額は、「賃金日額」と「給付率」を掛け合わせて決まります。
1.賃金日額の算出
倒産前の直近6ヶ月間(賞与を除く)の給与総額を180日で割って算出します。これが1日当たりの平均賃金、「賃金日額」となります。
例: 月給25万円だった場合
6ヶ月の給与総額:25万円 × 6ヶ月 = 150万円
賃金日額:150万円 ÷ 180日 = 約8,333円
2.給付率の適用
算出した賃金日額に、年齢と賃金水準に応じた給付率(45%〜80%)をかけます。賃金日額が低いほど給付率が高くなるため、低所得者ほど手厚い保障が受けられる設計です。
例: 賃金日額8,333円の場合(給付率50%〜80%程度)
基本手当日額は、年齢や状況によって約4,500円〜6,600円程度になります。
3.基本手当日額の上限
基本手当日額には上限が設定されています。
令和5年8月現在、60歳未満では日額8,490円、60歳以上65歳未満では日額7,294円が上限です。
高給取りの方でも、この上限を超える給付は受けられません。
これらの計算により、あなたの「基本手当日額」が算出されます。
これが失業保険として毎日支給される金額です。
7日間の待機期間と受け取れる時期
失業保険は、ハローワークに求職申込みをした日から「7日間」の待機期間を経て支給が開始されます。これは離職理由に関わらず、すべての方に適用される期間です。
給付開始は最短で約1ヶ月後
会社都合退職の場合、この7日間の待機期間が終了すれば、原則として給付制限期間なしで失業保険の受給が始まります。ただし、実際に給付金があなたの口座に振り込まれるのは、ハローワークで最初の失業認定(通常は求職申込みから約4週間後)を受けた約1週間後です。
つまり、ハローワークでの求職申込みから、最短でも約5週間後(1ヶ月強)が最初の給付金受け取りの目安となるでしょう。
最短受給までの流れ
- 離職票の入手:会社から受け取る(退職後10日以内が目安)。
- ハローワークで求職申込み:ここから7日間の待機期間が開始。
- 雇用保険説明会に参加:求職申込みから約1週間後に開催。
- 最初の失業認定日:待機期間終了後、約4週間後に設定。
- 給付金振り込み:認定日から約1週間後。
倒産という突然の事態で収入が途絶えた中で、一日でも早い給付開始を望むのは当然です。これらの流れを把握し、必要な手続きを迅速に進めることが、経済的な不安を最小限に抑える鍵となります。
年齢・勤続期間別の給付日数(最大330日)
失業保険の給付日数は、あなたが「特定受給資格者(会社都合離職者)」であるため、自己都合退職よりも大幅に優遇されています。年齢と雇用保険の被保険者期間によって、以下の通り給付日数が決まります。
年齢区分 |
1年未満 |
1年以上5年未満 |
5年以上10年未満 |
10年以上20年未満 |
20年以上 |
30歳未満 |
90日 |
90日 |
120日 |
180日 |
- |
30歳以上35歳未満 |
90日 |
90日 |
180日 |
210日 |
240日 |
35歳以上45歳未満 |
90日 |
90日 |
180日 |
240日 |
270日 |
45歳以上60歳未満 |
90日 |
180日 |
240日 |
270日 |
330日 |
60歳以上65歳未満 |
90日 |
150日 |
180日 |
210日 |
240日 |
【具体例】
42歳で勤続12年の方が倒産により失業した場合、270日間(約9ヶ月間)の失業保険を受給できます。
同じ条件で自己都合退職では150日間のため、約4ヶ月間も長く保障される計算です。
この給付日数の差は、再就職活動を焦らずに進める上で非常に重要な意味を持ちます。
特に中高年の方にとっては、就職の困難さを考慮した手厚い保障といえるでしょう。
特別な条件で給付期間が延長されるケース
上記の基本給付日数に加えて、特定の状況下では失業保険の給付期間がさらに延長される制度があります。
・個別延長給付(最大60日延長)
地域の雇用情勢が特に厳しい場合、ハローワークの判断で適用されることがあります。
大規模な企業倒産で地域経済への影響が深刻な際などが対象です。
・広域延長給付(最大90日延長)
全国的な景気悪化により、広範囲で雇用情勢が悪化した場合に実施される制度です。
経済危機の際に発動されることがあります。
・訓練延長給付
公共職業訓練や職業転換給付金の対象となる訓練を受講している場合、
訓練期間中は失業保険の給付が延長されます。
新たなスキル習得による就職力向上を支援する制度です。
これらの延長制度は、それぞれ自動的に適用されるわけではありません。
ハローワークでの相談や申請が必要となる場合が多いですが、積極的に利用してみてください。
【完全ガイド】失業保険の申請手続き5ステップ
失業保険を最短で受け取るためには、正しい順序で手続きを進めることが大切です。
ここでは、ハローワークでの申請方法を5つのステップで解説します。
ステップ1:必要書類の準備
まず、会社から交付される「離職票-1」と「離職票-2」が必要です。通常、退職日から10日以内に会社が作成し、本人に交付する義務があります。ただし、倒産の場合は事務処理が遅れることもありますから、会社に確認するか、ハローワークに相談しましょう。
他に準備するものは以下の通りです。
必要な書類
- 個人番号確認書類(マイナンバーカード、通知カードなど)
- 身元確認書類(運転免許証、パスポートなど)
- 写真(縦3cm×横2.4cm)2枚
- 印鑑
- 本人名義の銀行通帳またはキャッシュカード
ステップ2:ハローワークでの求職申込み
必要書類が揃ったら、お住まいの地域を管轄するハローワークへ行き、求職申込みをしましょう。この日が失業保険受給の起算日となりますので、書類が揃い次第、できるだけ早く手続きをするのがおすすめです。窓口では求職申込書への記入と職業相談を受け、受給資格の仮決定が行われます。
ステップ3:雇用保険説明会への参加
求職申込みから約1週間後に開催される雇用保険説明会に参加します。この説明会では、失業認定の仕組みや求職活動の方法について詳しい説明があります。参加は義務付けられていますので、欠席すると受給開始が遅れる可能性があるので注意してください。説明会終了後、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が交付されます。
ステップ4:待機期間(7日間)の経過
ハローワークに求職申込みをした日から7日間は、法律で定められた待機期間です。この期間中は失業保険の給付は受けられません。しかし、この期間も積極的に求職活動を続けることが大切です。ハローワークでの職業相談や求人検索、民間の職業紹介会社への登録など、後の失業認定で必要となる活動実績を作っておきましょう。
ステップ5:失業認定と給付開始
待機期間終了後、指定された認定日にハローワークで失業認定を受けます。この際、これまでの求職活動実績を申告し、引き続き失業状態であることを証明する必要があります。認定を受けた約1週間後に、指定した口座へ失業保険が振り込まれる流れです。
これらの手続きを確実に実行することで、失業保険を最短での受け取ることができます。会社都合での離職の場合は給付制限期間がないため、待機期間終了後すぐに給付が開始されるのは大きな利点です。
会社倒産で離職票をもらえない場合は?
会社が倒産すると、通常はハローワーク経由で離職票が発行され、失業保険の手続きがスムーズに進みます。しかし、実際には「なぜか離職票がなかなか受け取れない」といったケースも少なくありません。このような場合の理由と対策について、解説します。
離職票がもらえない主な理由
・倒産手続きの未完了
倒産手続きが進行中で、会社が離職証明書などの必要書類を
ハローワークに提出できていない場合があります。
・会社の対応遅れや経理部門の混乱
特に小規模企業では倒産に伴う事務処理が滞り、離職票発行が後回しになることもあります。
・担当者不在や会社連絡不能
倒産により担当者が不明で手続きが止まる場合があります。
離職票がもらえない場合の対処法
・雇用保険被保険者証を確認し、ハローワークに相談
雇用保険に加入している証明となる被保険者証を持参し、離職票なしでも失業保険申請が可能か相談・交渉しましょう。
・破産管財人に相談
倒産手続き中の場合は破産管財人が従業員の雇用保険手続きを把握していることが多く、発行を依頼できます。
・ハローワークでの代行発行申請
ハローワークは会社の代わりに離職証明書の確認等を行い、離職票の発行を職権で進めることも可能です。
離職票は失業保険支給の大切な書類です。離職票が手元にない場合でも、できるだけ早くハローワークや弁護士に相談して適切な手続きを進めることが、生活の安定につながります。ご不明な点や困ったことがあればお気軽にご相談ください。
生活費が足りない…を解決する追加支援制度
失業保険の手続きは済ませたものの、「これだけで生活できるのだろうか…」と不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、倒産による離職者には、失業保険以外にも様々な支援制度が用意されています。これらの制度を組み合わせることで、経済的な不安を大幅に軽減できる可能性があります。
未払い賃金立替払制度で滞納給料を取り戻す方法
会社が倒産した際に最も深刻な問題の一つが、給料や退職金の未払いです。そんな時に頼りになるのが「未払い賃金立替払制度」です。
【制度の概要】
企業の倒産により賃金が支払われないまま退職を余儀なくされた労働者に対し、国が未払い賃金の一部を立替払いする仕組みです。
【対象となる賃金】
退職日の6ヶ月前から立替払請求日の前日までの間に支払期日が到来している未払い賃金(基本給、諸手当、退職金など)。賞与は原則対象外です。
【立替払額の上限】
退職時の年齢に応じて、88万円から296万円の範囲で未払い賃金の最大8割が立替払いされます。
【相談窓口】
労働基準監督署。倒産の認定申請や請求手続きについて相談できます。
【ポイント】
この制度には申請期限があります。倒産の事実があった日の翌日から6ヶ月以内、立替払請求は倒産の認定日または退職日のいずれか遅い日の翌日から2年以内です。混乱の中でも、期限を逃さないよう早めの行動が重要です。
住居確保給付金と職業訓練受講給付金の併用
収入が途絶え、住居費の支払いが困難になるケースも多いでしょう。また、新たな就職のために職業訓練を受けたいと考える方もいらっしゃいます。そんな状況で活用したいのが、これら二つの給付金の併用です。
住居確保給付金
【制度の概要】
離職により住居を失った方や失うおそれのある方に対して、家賃相当額を一定期間支給する制度です。【支給期間】
原則3ヶ月(要件を満たせば最長9ヶ月まで延長可能)。
【支給額】
地域や世帯構成によって異なります(例:東京都23区内の単身世帯では月額53,700円が上限)。
【対象者】
離職後2年以内、世帯収入や金融資産が一定基準以下であること、求職活動を継続していることなどが要件です。
【相談窓口】
お住まいの市区町村の福祉担当窓口または自立相談支援機関。
職業訓練受講給付金
【制度の概要】
雇用保険を受給できない求職者が、国の指定する職業訓練を受講する場合に支給される制度です。
【支給内容】
月額10万円の職業訓練受講手当に加え、通所手当(交通費)や寄宿手当も支給されます。
【対象者】
雇用保険を受給できない方で、世帯収入・金融資産が一定基準以下であること、ハローワークで職業相談を行い訓練受講が必要と認められた方などが要件です。
【相談窓口】
ハローワーク
併用ポイント
住居確保給付金の要件である「求職活動の継続」に、職業訓練の受講が含まれるため、訓練を受けながら住居確保給付金も受給できます。まずは住居確保給付金の申請を行い、生活基盤を安定させてから職業訓練の相談に進むのがおすすめです。
その他の活用すべき制度
生活福祉資金貸付制度
【概要】
低所得者や失業による生活困窮者に対し、無利子または低利で資金を貸し付ける制度です。
【内容】
総合支援資金(生活費、住居移転費など)、緊急小口資金(緊急の一時的な生活費)など。
【相談窓口】
お住まいの市区町村の社会福祉協議会。
国民健康保険料・国民年金保険料の減免制度
【概要】
失業により収入が減少した場合、国民健康保険料や国民年金保険料(年金)が減額されたり、納付が猶予されたりする制度です。
【相談窓口】
国民健康保険料は市区町村の担当窓口、国民年金保険料は年金事務所。
これらの制度は、あなたの生活を支える大切なセーフティーネットです。一人で悩まず、積極的に情報収集し、利用可能なものはすべて活用してください。公的機関の担当者が、あなたの状況に応じて最適な選択肢を一緒に考えてくれるはずです。
倒産後の失業保険で注意すべき落とし穴とは?
会社が倒産してしまった場合、失業保険(雇用保険)の受給が可能となりますが、実はその手続きや受給条件には注意すべき点がいくつかあります。失業保険のよくある質問について解説します。
失業保険は1度受給すると、2回目以降はもらえない?
失業保険の受給について、「2回目以降はもらえないのでは」と心配する方がいらっしゃいますが、実際には回数制限はありません。失業保険(雇用保険)は、前回受給後に再就職し、一定期間(原則自己都合なら2年間で通算12か月以上、会社都合なら1年間で通算6か月以上)雇用保険に加入していれば、2回でも、何度でも受給可能です。
まず、失業保険の受給に関する基本的なルールについて簡単に説明します。
1. 失業保険の再受給の基本条件
失業保険は、通常、仕事を失った場合に受け取ることができる給付金ですが、過去に受け取ったことがある場合でも、再度失業した際に受給資格があれば再受給できます。ただし、再受給には一定の条件が必要です。
・前回の受給後、一定期間の働きがあること
失業保険を受給した後、再度受給を希望する場合、前回の受給期間終了後、一定期間(通常は雇用保険に加入していた期間)が必要です。この期間は、再受給の条件となる「被保険者期間」に関係しています。
・一定の勤務期間を満たすこと
再度受給するためには、再就職先で一定の期間(通常は6ヶ月以上)働く必要があります。この期間が「雇用保険の被保険者期間」としてカウントされ、その後、失業した場合に再度受給資格が得られます。
2. 受給日数や受給額の取り決め
再受給の際に注意すべき点は、1度目と2度目以降の受給日数や金額が異なる場合があることです。基本的に、再受給時には以下の条件を満たすことで、再度失業保険を受け取ることができます。
・再受給の際に受け取る日数
受給できる日数は、再受給の条件やあなたが失業する前の勤務期間に基づいて決まります。たとえば、初回受給時に長期間働いていた場合、再受給時にも長い給付日数が得られる可能性があります。
・再受給の際の金額
2回目以降の受給額は、前回の給付金額に基づいて計算されます。雇用保険の掛け金や勤務期間により、再度受給する金額が変更されることがあります。
3. 失業保険を2回目以降に受ける際のポイント
再受給する際に気をつけるべきことは、以下の点です。
・再受給するための条件が満たされているか確認する
再受給を希望する場合、まずは雇用保険に再度加入していること、そして一定期間以上働いていることが必要です。自分の状態が再受給条件を満たしているかを確認しておきましょう。
・手続きに必要な書類を確認する
受給を申請するためには、前回の受給期間が終了した後の再度の勤務証明などの書類が必要になることがあります。離職票や勤めていた会社からの証明書を準備しておくことをおすすめします。
ただし、短期間の離職を繰り返して5年間に3回以上受給した場合などは、給付制限が厳しくなる場合があります。受給額は離職前6か月の賃金等を基準に計算され、前回の受給実績が必ずしも直接影響するわけではありません。
申請には、離職票や本人確認書類、マイナンバー確認書類などが必要です。不明点はハローワーク、弁護士や社会保険労務士などにも相談できますので、ご自身の状況に応じて確認しましょう。
パートも失業保険はもらえる?
失業保険(雇用保険)は正社員だけでなく、パートタイマーの方も一定の条件を満たすことで受給が可能です。近年、パート・アルバイトで働く方が増える中、「自分も失業保険を受け取れるのだろうか?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。ここでは、パートの方が失業保険を受けるための条件や手続き上の注意点を、法的根拠も交え分かりやすく解説します。
1. 雇用保険の加入要件
パートタイマーであっても、「週20時間以上の労働」かつ「31日以上の継続雇用見込み」があれば、法律上雇用保険への加入が義務付けられています。この基準を満たしている場合、勤務先の規模や企業ごとの方針にかかわらず、雇用保険に加入でき、その後失業保険の受給要件を満たすことが可能です。
2. 過去の被保険者期間と通算について
失業保険を受給するには、退職理由に応じて一定の「被保険者期間」が必要です。
・自己都合退職の場合:離職日以前の2年間に通算12か月以上の被保険者期間
・会社都合退職等の場合:離職日以前の1年間に通算6か月以上の被保険者期間
転職などで複数の勤務先がある場合でも、空白期間が1年以内であれば被保険者期間を合算できます。
3. 退職理由が受給内容にどう影響するか
退職理由により、失業保険の支給開始時期や給付日数が異なります。
・自己都合退職の場合:通常、待機期間7日+2か月の給付制限期間が設けられます。
・会社都合退職や特定理由離職者の場合:7日間の待機後、すぐに給付が開始され、給付期間も長くなることがあります。
4. 受給中にパート勤務する場合の注意点
失業保険の受給期間中、パートで働くことは可能ですが、週20時間以上かつ31日以上の雇用契約があると「再就職」と見なされ、受給資格を失います。また、それ未満の勤務でも所定の収入額を超えると、失業保険の支給が減額・停止される場合がありますので、勤務内容や収入にご注意ください。
5. 申請手続きと相談先
ハローワークで必要な書類
- 退職証明書
- 雇用保険被保険者証
- マイナンバー確認書類
- 本人確認書類
- 写真など
制度や手続きに不安がある方は、ハローワークのほか、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談することもできます。
パートタイマーであっても、上記の条件を満たせば失業保険を受給する権利があります。雇用保険の加入基準や被保険者期間、就業中の注意点などポイントを押さえ、ご自身の権利を正しく理解しましょう。
損しないために!失業保険の注意点とポイント
失業保険を受給中に、うっかりすると減額・停止されてしまう事例もあります。不正受給の場合は、罰則があります。損をしないためにも、失業保険の注意点とポイントを抑えておきましょう。
給付制限に注意!失業保険が減額・停止されるケース
失業保険を受給中に、給付が減額されたり一時的に停止されたりするケースがあります。倒産による解雇の場合でも、以下の点には注意が必要です。
アルバイトや日雇い労働の調整
失業保険受給中でも、1日4時間未満かつ週20時間未満の労働であれば「内職・手伝い」として届け出ることで、一定の収入を得ることが可能です。
しかし、この条件を超える労働や、ハローワークへの届け出を怠った場合は、その期間の給付が停止されたり、不正受給とみなされたりする可能性があります。
「少しだけならバレないだろう」という軽い気持ちが、後で大きな問題に繋がることがありますので、必ず事前にハローワークに相談しましょう。
病気やケガで求職活動ができない場合
失業保険は「働く意思と能力があるにもかかわらず、就職できない状態」にある方を対象とした制度です。医師から就労不可の診断を受けた場合は、給付が一時停止されます。この場合は、受給期間の延長手続きを行う必要があります。
このような給付制限を避けるためには、ハローワークの担当者と密に連絡を取り、少しでも疑問があれば事前に相談することが重要です。家族の介護などで通勤が難しいケースでも、まずは相談してみましょう。
再就職手当と早期就職のメリット
再就職手当は、失業保険の受給者が早期に安定した職業に就いた場合に支給される制度です。この制度を活用することで、長期間の失業状態を避けながら、まとまった資金を得ることができます。
【支給額】
失業給付の支給残日数によって決まります。
支給残日数が所定給付日数の3分の2以上:支給残日数の70%相当額
支給残日数が所定給付日数の3分の1以上3分の2未満:支給残日数の60%相当額
例:基本手当日額5,000円で支給残日数が180日ある場合、早期に就職すれば最大63万円(5,000円 × 180日 × 70%)の再就職手当を受け取れる計算です。
◆受給条件の確認
・「安定した職業に就くこと」(1年以上継続して勤務が確実で、雇用保険の被保険者となる職業)
・待機期間満了後の就職であること
・離職前の事業主に再び雇用されるものでないこと、など。
再就職活動のポイント
1.自己分析と市場価値の把握
自分のスキルや経験が、現在の市場でどの程度評価されるか客観的に把握しましょう。
ハローワークのキャリアコンサルティングサービスを活用するのも良い方法です。
2.情報収集の多様化
ハローワークだけでなく、転職サイトや人材紹介会社も積極的に活用します。倒産という特殊な事情がある場合、人材紹介会社のコンサルタントは、事情を理解してくれる企業を紹介してくれる可能性が高いです。
3.職業訓練の検討
必要に応じて、新しいスキルを身につけるための職業訓練制度の利用も検討しましょう。訓練期間中の生活費も確保できる場合があります。
4.面接対策
倒産による離職であることを、前向きに説明できるよう準備しておいてください。「困難な状況を通じて、リスク管理の重要性を学んだ」「新しい環境で自分の能力を試したい」など、建設的な表現を心がけることが大切です。
まとめ
会社の倒産は、あなたにとって大きな試練です。しかし、失業保険だけでなく、未払い賃金立替払制度、住居確保給付金、職業訓練受講給付金など、あなたの生活を支えるための様々な公的支援制度が存在します。これらの制度を最大限に活用し、経済的な不安を軽減しましょう。
そして、何よりも大切なのは、一人で抱え込まないことです。ハローワークの職員、市区町村の福祉担当者、社会保険労務士、弁護士など、あなたの状況を理解し、支援してくれる専門家はたくさんいます。積極的に相談し、サポートを受けながら、新しいスタートに向けて着実に歩みを進めていってください。
大阪の川端総合法律事務所は、中小企業や個人事業主の破産を専門とする事務所です。働いている会社が倒産してしまった従業員の方だけでなく、会社の経営に悩んでいる代表の方からもご相談いただいています。会社の債務整理には、破産だけでなく、事業活動の更生を目的とした民事再生など、状況に応じてさまざまな方法があります。全国から無料でご相談ができますので、まずはお早めにご連絡ください。