会社の破産手続きは、経営者にとって非常に重い決断です。しかし、裁判所での手続きとは別に、「登記」の面でも対応が必要となることをご存知でしょうか。法人破産を決断した代表者の多くが、実は「破産登記」を見落としがちです。この登記を適切に行わないと、予期せぬトラブルや代表者個人の責任問題に発展するリスクがあります。この記事では、法人破産登記とは何かという基本から、なぜこの登記が必要なのか、法人破産に伴う登記簿への影響など、会社が破産する際の登記について解説します。
法人破産登記とは?基本知識と登記簿への影響
法人破産の手続きを進めるにあたって、裁判所での手続きとは別に、法務局での「破産登記」が必要です。この登記はいわば、会社が破産状態にあることを第三者へ公に示す、極めて重要な手続きとなります。ここでは「法人破産登記」の基本について解説します。
破産登記の法的位置づけとその必要性
破産登記は、会社法第937条および商業登記法に基づく法的義務です。代表者としてのご心労は計り知れませんが、この義務を果たすことは非常に大切です。
裁判所で破産手続開始決定を受けた場合、破産管財人が選任されれば管財人が、少額管財や同時廃止の場合は代表者ご自身が登記申請を行う必要があります。
この登記の最大の目的は、「第三者保護」です。もしも、破産した会社が引き続き営業活動を行っているように見える場合、新たな取引先や顧客に損害を与えてしまう、といった事態を防ぐ目的があります。例えば、破産手続き中の建設会社が新規の工事契約を結んだ場合、発注者は工事が完了しない可能性が高いにもかかわらず、前金を支払ってしまうリスクにさらされることになります。
また、登記が完了すると、会社の代表者の代表権も消滅します。そのため、代表者が個人的な判断で会社名義の契約を結んでも、法的には無効となるのです。これは、債権者間で平等な扱いを確保し、特定の取引先だけが優遇されるような事態を防ぐためにも重要です。
さらに、破産登記は税務上の手続きとも密接に関連しています。税務署への最終申告書の提出や、消費税の課税事業者からの除外手続きなども、この登記を基準として進められるケースがほとんどです。
破産すると登記簿が「閉鎖」される仕組み
破産登記が完了すると、会社の登記簿は「閉鎖」状態へ移行します。この「閉鎖」とは、その登記簿で新たな登記や変更登記ができなくなる状態を指します。具体的には、登記簿の表題部分に「破産により閉鎖」と記載され、その後は履歴事項証明書や現在事項証明書を取得できなくなります。
閉鎖された登記簿の情報を確認したい場合は、「閉鎖事項証明書」という特別な証明書を法務局で取得する必要があります。この証明書には、破産前の会社の基本情報(商号、所在地、代表者、資本金など)と破産の事実が記載されています。破産後も一定期間は、第三者が会社の過去の状況を確認できる仕組みになっています。
登記簿閉鎖のタイミングは、破産手続開始決定から通常2週間以内とされています。しかし、破産管財人が選任される場合は、管財人による調査や処理が完了してから登記されることもあり、数ヶ月後となるケースも珍しくありません。
ここで大切なのは、登記簿が閉鎖されても、会社の法人格が完全に消滅するわけではない、という点です。法人格が消滅するのは、破産手続きがすべて終了し、裁判所から破産手続終結決定を受けて初めて消滅します。そのため、閉鎖期間中も一定の法的責任や手続きが残る可能性を理解しておきましょう。
破産登記を怠った場合のリスクと罰則
破産登記を怠ると、代表者ご自身に複数のリスクが降りかかる可能性をはらんでいます。
具体的なリスクは以下の通りです。
・100万円以下の過料
商業登記法違反として、代表者個人に過料が科される可能性があります。これは行政罰であり、会社の債務とは関係なく、代表者が個人的に支払うべきものです。
・民事上・刑事上の責任
破産登記を行わずに営業活動を継続すると、新たな取引先に対して「詐欺」に該当する行為とみなされる恐れがあります。特に、破産状態を隠して商品の前払いを受けたり、工事の着手金を受領したりした場合は、詐欺罪(刑法246条)に問われるリスクが非常に高まります。
・債権者からの損害賠償請求
破産登記を怠ったことで債権者が追加の損害を被った場合、代表者個人に対して損害賠償を求められることがあります。この損害賠償債務は「非免責債権(個人破産をしても支払い義務が免除されない債務)」として扱われる可能性が高く、代表者が個人の自己破産を行っても残存するリスクに繋がるでしょう。
・税務上の問題
法人税や消費税の申告義務は破産登記まで継続します。登記を怠ると申告期限の管理が曖昧になり、無申告加算税や延滞税が加算される可能性があります。
このような重大なリスクを避けるためには、破産手続開始決定を受けたら速やかに司法書士や弁護士へ相談し、登記手続きをきちんと進めることが不可欠です。
法人破産登記の申請手続きと必要書類
法人破産が決まり、登記手続きの複雑さに不安を感じている代表者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。申請書類の作成から提出まで、一つ一つの流れを正確に把握することで、手続きをスムーズに進めることができます。
破産手続開始決定から登記申請までの流れ
破産手続開始決定が下されると、法人としての清算業務が本格的に動き出します。この段階で代表者として重要なのは、登記申請までの流れを正確に理解し、期限内に必要な手続きを完了させることです。
具体的な流れは次の通りです。
1.破産管財人の選任
破産手続開始決定の通知を受け取ると、まず破産管財人が選任されます。破産管財人は裁判所から選ばれた弁護士や司法書士が担当し、会社の財産管理や債権者への配当業務を一手に引き受ける専門家です。この時点で、代表者としての権限は大幅に制限され、重要な判断は破産管財人を通じて行われるようになります。
2.破産手続開始決定書の取得
登記申請の準備段階として、破産手続開始決定書の正本または謄本を取得する必要があります。これは法務局への登記申請で必須となる書類ですので、裁判所の書記官室で交付を受けましょう。交付手数料として1通につき150円程度が必要です。複数通必要な場合は、事前に確認しておくと手続きがスムーズです。
3.登記申請のタイミング
申請のタイミングは、破産手続開始決定が確定してから2週間以内が一般的です。この期限は絶対的なものではなく、実務上は多少の遅れがあっても受理されるケースが多いでしょう。それでも、債権者や取引先への対応を考慮すると、可能な限り早期に申請を完了させるのが望ましいとされています。
4.最終確認
申請前の最終確認として、会社の商業登記簿謄本を取得し、現在の登記内容と申請書類の記載に齟齬がないかチェックしておきましょう。特に本店所在地や代表者氏名に変更があった場合は、破産登記と同時に変更登記も必要になることがあります。
登記申請で必要な書類一覧と作成のポイント
登記申請には、以下の書類が必要です。作成のポイントと合わせて確認していきましょう。
1.破産手続開始決定による登記申請書
・重要性: 最も重要な書類です。
・記載内容
会社の基本情報(商号、本店所在地、会社法人等番号)を正確に記載しましょう。記載内容は既存の商業登記簿謄本と完全に一致させることが重要で、わずかな違いでも申請が受理されない可能性があります。
・特記事項
「登記の事由」欄には「破産手続開始の決定」と、「登記すべき事項」欄には破産手続開始決定の年月日と裁判所名を記載します(例:「令和6年3月15日東京地方裁判所において破産手続開始の決定」)。申請日は実際に法務局に提出する日付を、申請人欄には会社の商号と代表者名を記載してください。
2.破産手続開始決定書の正本または謄本
・重要性: 裁判所が破産手続きの開始を決定したことを証明する公的書類です。
・記載内容
破産者である会社の情報、破産管財人の氏名、破産債権の届出期間などが記載されています。
・提出時の注意
法務局への提出では正本または謄本のいずれでも受理されますが、正本の方が確実性が高いとされます。
・確認ポイント
破産者として記載されている会社名と本店所在地が、申請書および現在の登記内容と完全に一致しているか確認しましょう。もし裁判所の記載に誤りがある場合は、申請前に裁判所に訂正を求める必要があります。この手続きには時間がかかるため、早期の確認が肝心です。
3.その他の添付書類
・収入印紙: 登録免許税として30,000円分の収入印紙が必要です。申請書に貼付して提出します。
・申請書の副本: 登記完了後の控えとして、申請書の副本も準備しておくことをおすすめします。
・委任状(代理人依頼の場合)
司法書士などの代理人に依頼する場合は、会社の代表者印を押印した委任状と、その印鑑証明書を併せて提出が必要です。破産手続き中は代表者の権限が制限されているため、破産管財人の同意を得た上で委任状を作成することが重要になります。
申請書類作成でよくあるミスと対処法
申請書類作成で代表者の方が陥りがちなミスと、その対処法を知っておきましょう。
1.会社情報の記載ミス
・よくあるミス:最も多いのは、会社の基本情報の記載ミスです。
特に商号や本店所在地の記載で、一文字の相違や住居表示の記載方法の違いが原因で申請が却下されるケースがあります。例えば「株式会社」の位置や、住所の「丁目」「番地」「号」の使い分けなど、細かい部分まで既存の登記簿謄本と完全に一致させる必要があります。
・対処法
申請書作成前に必ず最新の商業登記簿謄本を取得し、記載内容を一文字ずつ確認しましょう。手書きで作成する場合は、読み間違いを避けるためにも楷書で丁寧に記載することが大切です。パソコンで作成する場合も、印刷後の最終確認を怠らないようにしてください。
2.日付の記載間違い
・よくあるミス
破産手続開始決定の日付は、裁判所の決定書に記載された正確な日付を記入しなければなりません。申請日と決定日を混同したり、西暦と和暦を間違えたりするケースがよく見られます。また、決定日が土日祝日であっても、裁判所の記載通りの日付を使用することが重要です。
・対処法
決定書の原本を手元に置きながら申請書を作成し、日付部分は特に慎重にチェックしましょう。複数人でダブルチェックを行うことも有効な手段です。
3.押印と印鑑証明書の不備
・よくあるミス
申請書には会社の実印を押印する必要がありますが、破産手続き中は印鑑の管理も複雑になりがちです。破産管財人が選任されている場合、印鑑の使用については事前に管財人へ相談し、必要に応じて同意を得ることが大切です。また、印鑑証明書の有効期限(通常3か月)にも注意してください。期限切れの証明書では申請が受理されないので気をつけましょう。
・対処法
印鑑に関するトラブルを避けるために、破産手続開始前に印鑑証明書を複数通取得しておくことをおすすめします。押印の際は印影が不鮮明にならないよう、朱肉の量や押印の力加減に注意し、試し押しをしてから本番の書類に押印する工夫も必要です。
申請費用と提出先の詳細
登録免許税と手数料
法人破産登記の申請には、以下の費用がかかります。
【登録免許税】
・金額(目安):30,000円
・支払先:法務局(収入印紙)
・備考:申請書に貼付して提出。高額印紙は事前に在庫確認または予約がおすすめ。
【決定書謄本取得費】
・金額(目安):150円程度/通
・支払先:裁判所
・備考:複数通必要な場合は、その分の費用も計算に入れておく。
【専門家報酬】
・金額(目安):5万円~10万円程度
・支払先:司法書士・弁護士
・備考:専門家に依頼する場合の目安。事務所によって金額は異なる。
提出先と受付時間
申請書の提出先は、会社の本店所在地を管轄する法務局の商業登記課です。管轄法務局は法務省のウェブサイトで確認できますが、本店移転などで管轄が変わっている場合もあるため、事前に電話で確認しておくことをおすすめします。
法務局の受付時間は平日の午前8時30分から午後5時15分までです。土日祝日は受け付けていませんのでご注意ください。申請は窓口での直接提出のほか、郵送でも可能です。郵送の場合は書留郵便を使用し、到達確認ができるようにしておくと安心です。申請書に不備があった場合の連絡先として、日中連絡の取れる電話番号を必ず記載しておきましょう。
破産手続き完了と登記の最終処理
破産手続きの最終段階では、管財人による財産処理と債権者配当が完了した後、裁判所による破産手続き終結の決定が行われます。この段階で、登記所にて法人として最後の登記手続きが必要となります。
1.法人格の消滅と登記の申請
破産手続き終結決定が確定すると、法人格は消滅します。この事実を公示するため、法務局において「破産手続き終結の登記」を申請する必要があります。この登記は、破産手続き終結決定の確定から2週間以内に行う必要があり、通常は管財人が手続きを進めます。
2.登記記録の閉鎖
登記が完了すると、商業登記簿には「破産手続き終結により解散」の旨が記載され、法人の登記記録は閉鎖されます。これにより、法人は完全に消滅します。ただし、登記簿の記録自体は一定期間保存されるため、将来的に登記事項証明書(閉鎖事項証明書)を取得することは可能です。これは、破産した法人との取引履歴を証明する必要がある場合などに活用されるでしょう。
3.代表者の責任と個人保証
破産手続きの完了により、代表者の法的な責任も基本的に終了します。しかし、破産に至る過程で代表者個人に法的責任が生じている場合(例えば、個人保証を行っている場合や、法人の債務について連帯責任を負っている場合)は、別途対応が必要となるため注意が必要です。
4.関係機関への各種届出
破産手続きが完了しても、代表者として各種届出を行う必要があります。税務署への届出、社会保険事務所への手続き、労働基準監督署への報告など、関係機関への最終的な手続きを確実に行いましょう。
申請後の流れと登記完了
申請が受理されてから登記完了までの流れを把握しておきましょう。
1.登記完了までの期間
申請が受理されると、通常1週間から10日程度で登記が完了します。
2.内容の確認
登記完了後は、商業登記簿謄本を取得して内容を確認しましょう。この謄本には「破産手続開始決定」の記載が追加されています。債権者や取引先への通知などで必要になるケースも多いため、複数通取得しておくことをおすすめします。
3.会社の法的制限
破産登記が完了すると、会社は法的に破産状態であることが公示され、新たな取引や契約の締結が大幅に制限されます。
4.清算手続きの進行
この段階からは破産管財人が主導となって清算手続きが進められ、最終的には破産手続きの終了決定を経て会社の登記は抹消されることになります。
法人破産の登記手続きは、書類作成から提出まで専門知識と正確性が求められる複雑な手続きです。不安な点があるときは、司法書士や弁護士などの専門家への相談をおすすめします。
破産後の登記簿確認と閉鎖登記簿の取得方法
会社が破産手続きを終えた後、「本当に登記が完了しているのだろうか」「必要な書類はすべて揃っているのか」と不安に感じることもあるでしょう。破産後に登記簿を確認することは、今後の手続きや法的な責任を明確にするためにも重要です。
破産後の登記簿確認と閉鎖登記簿の取得方法
破産手続が完了した後の法人の登記簿は、通常の登記事項証明書とは異なる扱いとなります。破産により法人格が消滅すると、その会社の登記は「閉鎖」され、一般的な登記簿からは確認できなくなります。しかし、完全に記録が消えるわけではなく、閉鎖登記簿という形で保管され続けるものです。
通常の登記事項証明書を取得しようとすると、「該当する会社が見つからない」という結果になり、実際に、破産手続きを経験した経営者の方からも、「破産後に銀行から登記簿の提出を求められたが、どのように取得すればよいのかわからなかった」というご相談をいただくケースがあります。
破産後の登記簿確認は、単に記録を取得するだけでなく、破産手続きが法的に完了していることの証明や、今後の個人的な手続き(クレジット契約など)で必要になる場合もあります。正しい手順を把握しておくことで、必要な時にスムーズに対応できるようにしましょう。
登記事項証明書で破産記録を確認する手順
破産手続き中の法人であれば、まだ通常の「登記事項証明書」で破産に関する記録を確認することができます。破産手続開始決定が出ると、登記簿の「役員に関する事項」欄に破産管財人の氏名と住所が、そして「その他の事項」欄に破産手続開始の年月日と裁判所名が記録されます。
登記簿の取得方法は以下の通りです。
1.取得方法
法務局窓口での取得が最も確実な方法です。申請書には、会社の商号、本店所在地、会社法人等番号(わからない場合は設立年月日)を正確に記入し、「現在事項証明書」または「履歴事項証明書」を選択します。過去の変更履歴も含めて確認したい場合は、履歴事項証明書が適しているでしょう。
オンライン申請も可能ですが、破産手続き中の法人の場合、システム上で検索しにくいケースがあります。特に破産手続開始後に商号変更や本店移転があった場合、検索キーワードと実際の登記内容が一致せず、エラーとなることも。確実性を重視するなら窓口申請をおすすめします。
2.手数料
窓口取得で1通600円、オンライン申請で1通500円の手数料がかかります。
3.確認事項
破産記録の確認が目的であれば、現在事項証明書で十分です。しかし、金融機関などから提出を求められる場合は、どちらの種類が必要か事前に確認しておきましょう。
閉鎖登記簿謄本の取得方法と注意点
破産手続きが終結し、法人格が消滅すると登記簿は閉鎖され、通常の登記事項証明書では取得できなくなります。この段階では「閉鎖登記簿謄本」として申請が必要です。多くの方が「会社がなくなったから登記簿も取れない」と誤解されがちですが、閉鎖後も一定期間は取得できます。
取得方法と注意点は以下の通りです。
1.取得方法
閉鎖登記簿謄本は法務局窓口でのみ取得できます。オンライン申請には対応していません。申請書には「閉鎖登記簿謄本」と明記し、閉鎖前の商号、本店所在地、閉鎖年月日(おおよそでも可)を記入しましょう。会社法人等番号がわかれば記入しますが、不明な場合は設立年月日や代表者名を補完情報として提供すると検索しやすくなります。
2.保存期間の限り
閉鎖登記簿には保存期間に限りがあります。閉鎖から20年間は確実に保存されていますが、それ以降は各法務局の判断により廃棄される可能性があります。また、コンピューター化以前の古い登記簿の場合、マイクロフィルムでの保存となっており、謄本の発行に時間がかかることがあります。
3.手数料と発行期間
手数料は1通750円で、通常の登記事項証明書より高額です。発行までに数日から1週間程度かかる場合もありますので、急ぎで必要な場合は事前に法務局へ確認することをおすすめします。
登記簿取得で失敗しないための事前確認事項
登記簿取得でよくある失敗は、現在の法人状態を正確に把握せずに申請してしまうことです。破産手続き中なのか、既に手続きが終結して閉鎖されているのかによって、申請する書類の種類が全く異なります。失敗を避けるためにも、以下の点を確認しておきましょう。
1.現在の手続き状況の把握
まず、破産管財人や代理人弁護士に現在の手続き状況を確認することから始めましょう。
2.商号や本店所在地の変更履歴
商号や本店所在地の変更履歴も重要な確認事項です。破産に至るまでの間に商号変更や本店移転を行っている場合、最新の情報だけでは検索できないことがあります。設立当初からの商号や本店の変遷を整理しておくと、法務局での検索がスムーズに進みます。
3.会社法人等番号と代替情報
会社法人等番号は最も確実な検索キーです。しかし、古い会社では法人番号制度開始前に休眠状態になっているケースもあります。この場合は、設立年月日、初代代表者名、設立時の資本金額などの情報が代替手段として有効です。可能な限り多くの情報を準備しておくことで、確実に該当する登記を特定できるでしょう。
4.取得目的の明確化
取得目的を明確にしておくことも重要です。金融機関への提出用、税務申告用、保険会社への報告用など、提出先によって求められる証明書の種類や記載内容が異なる場合があります。「とりあえず登記簿を取っておこう」ではなく、具体的な用途に応じて必要な書類を選択してください。
上記のように破産後の登記簿取得は、不動産登記など一般的な手続きとは異なる特殊な側面があります。もし手続きに不安を感じたり、複雑な事情がある場合は、破産手続きを担当した弁護士や司法書士に相談してみてください。状況に応じた適切なアドバイスを受けることができます。
法人破産登記で失敗しない!手続きの落とし穴と対応策
法人破産の登記手続きで、「書類が受理されなかった」「期限を過ぎてしまった」といった不安を抱えてはいませんか?実際に多くの代表者の方が、複雑な手続きの中で思わぬトラブルに直面し、さらなる負担を背負うケースも少なくありません。ここでは、法人破産登記で失敗しないために、よくある手続きの落とし穴とその対応策について解説します。
期限切れや書類不備への対応策
法人破産登記における期限管理は、代表者の方が最も注意すべきポイントの一つです。破産手続き開始決定から2週間以内という登記期限は、一見余裕があるように思えますが、書類準備や法務局とのやり取りを考慮すると、実際には非常にタイトなスケジュールです。
1.期限切れの場合
期限切れが発生した場合、まず理解しておくべきは「過料」という制裁措置です。会社法第976条により、登記義務者には100万円以下の過料が科される可能性があります。これは刑罰ではなく行政上の制裁であり、正当な理由があれば減免される場合もあります。万が一期限を過ぎてしまった場合でも、速やかに登記申請を行い、遅延理由書を添付することで、過料の減免や免除を求めることが可能です。
2.書類不備への対策
書類不備については、事前の準備が何よりも重要です。よくある不備としては、破産手続き開始決定書の謄本が不鮮明であること、代表者の印鑑証明書の有効期限が切れていること、登録免許税の計算ミスなどが挙げられます。特に注意が必要なのは、破産管財人が選任された場合の書類です。管財人からの証明書や同意書が必要になるケースもあり、これらの書類収集には時間がかかることがあります。
3.事前確認と相談
登記申請前には、必要書類のチェックリストを作成し、各書類の有効期限や記載内容を入念に確認することをおすすめします。法務局によっては事前相談制度を設けているところもあるため、不安がある場合は申請前に相談することで、書類不備による差し戻しを防ぐことができるでしょう。
代表者の個人責任と連帯保証の注意点
法人破産における代表者の立場は、法人格の否認や連帯保証の観点から、非常に複雑で重要な問題を含んでいます。多くの中小企業では、代表者個人が会社の借入れに対して個人保証をしているため、法人が破産しても代表者個人の責任は残り続ける事例が多いです。
1.連帯保証債務の処理
連帯保証債務の処理では、法人破産と同時に個人破産を検討するケースが一般的です。しかし、すべての代表者がこの選択をする必要があるわけではありません。保証債務の金額、個人資産の状況、将来の収入見込みなどを総合的に判断し、任意整理や個人再生といった他の債務整理手続きが適している場合もあります。ただし、保証債務が数千万円を超えるような場合や、個人資産でカバーできない場合には、個人破産を避けることは現実的ではありません。
2.法人格の否認理論
特に注意が必要なのは、「法人格の否認理論」です。会社と代表者個人の財産が混同している、会社の資産が代表者個人の利益のために流用されている、形式的にのみ会社組織を利用しているといった状況では、法人格が否認され、代表者が会社債務についても個人的に責任を負う可能性があります。このような事態を避けるためには、日頃から会社と個人の財産を明確に区分し、適切な会計処理を行うことが重要です。
3.善管注意義務
破産手続き中においても、代表者には「善管注意義務(善良な管理者の注意義務)」が課せられています。不動産などの会社財産の隠匿や不当な処分、債権者に対する不誠実な対応などは、破産犯罪に該当する可能性があり、刑事責任を問われるリスクもあるでしょう。これらの責任を適切に果たすためには、破産管財人や裁判所との密接な連携が不可欠となります。
2024年法改正による手続き変更点
2024年の法改正により、法人破産登記手続にはいくつかの重要な変更が加えられています。
主な変更点は以下の通りです。
1.デジタル化の推進
従来は書面での申請が中心でしたが、オンライン申請システムの拡充により、一部の登記手続はインターネットを通じた申請が可能になりました。これにより、法務局への出頭回数を減らし、時間とコストの削減が期待できます。ただし、オンライン申請の利用には、事前に電子証明書の取得や専用ソフトウェアのインストールが必要です。
2.登記事項証明書の交付手数料変更
登記事項証明書の交付手数料が見直されました。手数料が引き下げられた一方で、特定の証明書については新たな区分が設けられ、必要な証明書の種類によって手数料が細分化されています。破産登記後の各種手続で必要となる証明書の取得コストを事前に把握し、予算計画に反映させましょう。
3.債権者保護の強化
破産手続における債権者保護が強化されています。債権者への通知方法について、従来の官報公告に加え、インターネット公告の活用が推進され、より多くの関係者に情報が伝わりやすくなりました。これにより、債権者からの異議の申立てや問い合わせが増加する可能性があり、代表者としてはより丁寧で透明性の高い対応が求められます。
4.手続きの簡素化
特定の条件を満たす小規模法人については、提出書類の一部省略や手続きの簡略化が認められるようになりました。ただし、この簡略化制度を利用するためには、厳格な要件を満たす必要があり、専門的な知識による判断が必要です。
まとめ
法人破産の手続きを自力で進めることは、法的には可能ですが、現実的には非常に困難な道のりとなります。この記事で解説した法人破産登記は、法的知識だけでなく、実務経験や最新の法改正情報が重要になる複雑な手続きです。期限管理、書類準備、個人責任の切り分け等、一つ一つが会社と代表者の将来を左右する重要な要素となるでしょう。
弁護士の費用は経営者の方にとって大きな負担に感じられるかもしれません。しかし、手続きの不備による債権者からのクレーム、裁判所での手続き遅延、さらには代表者個人の責任追及といったリスクを考えると、専門家への依頼は単なる費用ではなく、「リスク回避のための投資」と考えることもできます。
法人破産を専門とする川端総合法律事務所では、土日を問わず忙しい24時間、電話やメールでのご相談を無料で受付中です。まずはお早めにご相談いただきたいと思います。