法人の民事再生とは?会社や企業の破産手続きを解説

法人の民事再生とは、裁判所の関与のもとで債務を大幅に減額し、事業を継続しながら再建を目指す法的手続です。単なる「破産」とは異なり、会社を存続させながら再生計画を立てることができることが大きな特徴です。強制執行が停止されるため、債権者からの取立てを一時的に止め、冷静に再建の道を探ることができます。

この記事では、法人の民事再生の仕組みから、破産との違い、手続きの流れ、そして実際にどんな企業が利用できるかについて解説します。経営危機の中でも、「会社を守りながら再起を図る」ための現実的な選択肢を一緒に理解していきましょう。

法人の民事再生手続きとは?会社を立て直すための制度を分かりやすく解説

民事再生手続は、財務的な困難に陥った会社が事業を継続しながら債務を整理し、経営を立て直すことを目的とした手続です。破産とは異なり、会社を清算するのではなく、債権者の協力を得ながら再生を図る前向きな手続きといえます。

多くの中小企業経営者にとって、会社は従業員やその家族、取引先、地域社会とのつながりを持つ大切な存在です。民事再生は、こうした関係性を可能な限り維持し、会社の継続を目的としています。

民事再生って何?基本的な仕組みを簡単に説明

民事再生手続きを一言でいえば、「会社を続けながら借金を整理する法的な仕組み」です。通常の経営で返済が困難になった債務について、裁判所の監督の下で債務の一部免除や支払期間の延長などを行い、無理のない範囲で債務を返済する計画を立てます。

具体的な流れとして、まず裁判所に民事再生を申し立てます。申立てが認められれば、その時点で債権者からの取立てや強制執行は停止します。これは経営者にとって大きな安心材料となるでしょう。たとえば、銀行からの連日の督促に悩まされていた状況から解放され、落ち着いて再建計画を検討できる時間を得られます。

その後、債権者に対して債権届出を求め、債務総額を正確に把握します。同時に、会社の資産状況や事業の将来性を詳しく調査し、現実的な再生計画案を作成します。この計画案には、どの程度の債務免除を求めるか、残った債務をいつまでにどのように返済するか、具体的に記載されます。

計画案ができあがったら、債権者による決議が行われます。債権者の多数決で計画案が可決されれば、裁判所が認可決定を出し、新しい返済計画に基づいて事業を継続していく流れです。つまり、会社を畳むことなく、負担を軽くした上で事業を続けられる可能性があります。債権者にとっても、破産による配当よりも多くの回収が期待できるため、合理的な選択となる場合が多いでしょう。

支払不能・債務超過の判断基準と見極め方

民事再生を検討する際の重要な判断基準は、「支払不能」と「債務超過」という二つです。これらは法的に明確に定義されており、民事再生の申立理由として認められます。

支払不能とは、会社が債務の支払いを継続的にできない状態を指します。単に一時的に資金が足りない状況ではなく、今後も支払いが困難な状況が続くと判断される場合です。たとえば、手形の不渡りを出してしまった、取引先への支払いを数ヶ月滞納している、従業員の給与遅配が続いているといったケースが該当します。これらは単なる一時的な資金不足ではなく、事業の収益力に対して債務負担が過大になっていることを示しています。

一方、債務超過は、会社の資産よりも負債の方が多い状態を意味します。貸借対照表上で負債が資産を上回っている状況です。ただし、帳簿上の債務超過だけでなく、実際の時価で評価した場合の債務超過かどうかが重要となります。たとえば、土地や建物などの不動産を簿価で計上していても、実際の市場価格は大幅に下落している可能性もあります。そうした現実的な資産価値を考慮し、判断することが必要です。

これらの判断は、経営者自身では難しい場合が多いものです。会計上の処理や法的な解釈が複雑に絡み合うため、専門家の助言を得ながら正確に状況を把握することが重要となります。支払不能や債務超過の状態になってから慌てて対処するよりも、そうした状況に陥る前に早めに専門家へ相談し、予防的な対策を検討することをおすすめします。

あなたの会社は民事再生を使えるか?申立て条件をチェック

民事再生手続きは全ての会社が利用できるわけではありません。申立てには一定の条件があり、これらを満たしていることが前提です。まず確認しておきたいのは、あなたの会社がこの制度を活用できる状況にあるかどうかです。

最も基本的な条件は、支払不能または債務超過の状態にあることです。しかし、それ以外にも重要な要件があります。特に中小企業の場合、事業に継続価値があることです。いくら債務を減額しても、事業自体に収益性や将来性がなければ、再生は困難です。たとえば、主力商品の需要が完全になくなった、競合他社に完全に市場を奪われたといった状況では、民事再生よりも他の選択肢を検討する方が良いかもしれません。

また、再生計画案に対して債権者の同意が得られる見込みがあることも重要です。債権者にとってメリットがない計画案では、決議で否決される可能性が高くなります。破産した場合の配当率よりも民事再生による弁済率の方が高い、または事業継続により債権者にとって長期的なメリットがあるといった要素が必要となるでしょう。

手続きの費用も考慮すべきです。民事再生手続きには裁判所費用、弁護士費用、監督委員への報酬など、相当な費用がかかります。負債総額が5,000万円程度の小規模な会社の場合でも、予納金として200万円程度、弁護士費用として300万円~800万円程度はかかるのが一般的です。これらは申立て前に確保しておく必要があるため、資金繰りが厳しい中での準備は大きな負担となり得ます。しかし、会社の規模や債務額に応じて簡易な手続きを利用できる場合もあるため、一概に諦める必要はありません。何より大切なのは、経営者自身に再建への強い意志があることです。

法人が民事再生を選ぶメリット・デメリット

民事再生は、裁判所の監督のもとで債務の一部カットや返済条件の変更を行い、会社の再建を図る制度です。従業員の雇用を守り、取引先との関係を維持しながら経営の再建を目指せるのが特徴です。一方で、手続きには時間とコストがかかり、すべての企業に適しているわけではありません。ここでは、民事再生のメリット・デメリットについて解説します。

民事再生を選ぶ3つのメリット

民事再生を選択するメリットは以下の3点です。

1.事業を継続しながら再建を図れること
破産とは異なり、会社の営業活動を止めることなく、従業員の雇用を維持できます。長年培ってきた顧客との信頼関係や、熟練した従業員のノウハウを失うことなく、経営の立て直しを進められます。
2.債務の大幅な圧縮が可能
民事再生では、通常、債務総額の10〜20%程度まで債務を圧縮できる可能性があります。たとえば、5億円の債務を抱えている企業であれば、再生計画が認可されれば1億円程度まで圧縮し、残りの4億円は免除されることもあります。この大幅な債務軽減により、キャッシュフローが改善され、事業の継続と成長への投資が可能となるでしょう。
3.経営陣の続投が可能
破産手続きでは会社が清算されるため経営陣も退任となりますが、民事再生では現経営陣が引き続き会社の運営を行います。これまでの事業経験や業界知識を活かしながら、債権者や裁判所の監督のもとで再建計画を実行できます。より現実的で実効性の高い経営再建が期待できるでしょう。ただし、経営陣に明らかな責任がある場合や、債権者からの信頼を失っている場合には、経営陣の交代が求められるケースもあります。

知っておくべきデメリットとリスク

民事再生には大きなメリットがある一方で、看過できないデメリットやリスクも存在します。

1.信用力の大幅な低下
民事再生の申立てが公告されると、取引先や金融機関からの信用が著しく損なわれます。新規の取引先開拓が困難になり、既存の取引先からも取引条件の見直しを求められることが多くなるでしょう。現金取引を要求されたり、保証金の差し入れを求められたりするケースも珍しくありません。金融機関からの新規借入れは極めて困難となり、運転資金の調達に苦慮することになります。
2.手続きにかかる時間とコスト
民事再生の手続きには通常6ヶ月から1年以上の期間を要します。その間、弁護士費用や裁判所への予納金、監督委員への報酬など、負債総額に応じて数百万円から数千万円の費用が発生するものです。たとえば、負債総額1億円の場合、予納金だけで300万円程度が目安となるでしょう。中小企業にとっては、この費用負担自体が経営を圧迫する要因となる可能性があります。さらに、再生計画案の作成や債権者説明会への対応など、経営陣の時間と労力も相当に必要です。
3.手続きが失敗する可能性
最も重要なリスクとして、手続きが失敗する可能性を認識しておくべきです。再生計画案が債権者の過半数の同意を得られなかった場合や、裁判所が認可しなかった場合には、民事再生手続きは廃止され、破産手続きに移行します。また、再生計画が認可されても、その後の履行ができなければ、やはり破産に至る可能性も否めません。統計上、民事再生を申し立てた企業のうち、最終的に再建に成功するのは3割程度といわれており、決して成功が保証された手続きではないのが現実です。

破産との違い:民事再生を選ぶべき理由

破産と民事再生の最大の違いは、会社の存続の可能性にあります。破産は会社を清算して消滅させる手続きであるのに対し、民事再生は会社を存続させながら再建を図る手続きです。

両者の違いを比較してみましょう。

民事再生

 ・会社の存続:事業を継続し、再建を目指す。
・従業員の雇用:原則として維持される。
・顧客・取引関係:可能な限り維持される。
・債務の整理:一部の借金をカットし、返済条件を変更して再編する。
・経営陣:原則として続投し、再建を主導する。
・債権者への配当:事業を継続することで、破産よりも高い回収が期待できる場合がある。
・信用への影響:信用力は低下するが、事業再開の可能性は残る。
・手続きの公開性:官報に掲載され、公開される。

法人破産

 ・会社の存続:会社を清算し、法人格が消滅する。
・従業員の雇用:全員解雇となる。
・顧客・取引関係:原則として失われる。
・債務の整理:資産を売却・換価して配当するのみ。
・経営陣:退任となる。
・債権者への配当:わずか数パーセント程度に留まることが多い。
・信用への影響:信用力は完全に失われ、事業再開は困難。
・手続きの公開性:官報に掲載され、公開される。

特に、熟練した技術者や専門知識を持つ従業員が企業の源泉となっている中小企業にとって、従業員の雇用を維持できる民事再生のメリットは極めて重要です。また、事業を継続することで将来の収益から債務を返済するため、債権者にとっても破産よりも多くの回収が期待できる場合があります。

ただし、民事再生を選択するには、事業に将来性があること、再建の見通しが立つこと、債権者の理解と協力が得られることなどの条件を満たす必要があります。単に破産を避けたいという理由だけでは、成功は期待できません。

経営難に直面している企業にとって、民事再生は重要な選択肢の一つです。しかし、その成功には専門的な知識と戦略的な判断が不可欠です。民事再生を検討される場合は、企業の再生に精通した弁護士に相談し、自社の状況を詳しく分析してもらうことをおすすめします。

民事再生以外の選択肢:私的整理との使い分け

事業再建には、民事再生以外にも「私的整理」という選択肢があります。どちらの手続きを選択するかは、会社の財務状況、取引先との関係性、事業の将来性など、複数の要因を総合的に判断することが重要です。適切な選択のためには、それぞれの手続きの特徴と、自社の状況にどちらが適しているかを正確に把握する必要があります。

私的整理とは?

私的整理とは、裁判所を通さずに会社と債権者が直接交渉を行い、債務の減額や返済条件の変更について合意を形成する手続きです。法的な枠組みに縛られることなく、当事者間の話し合いによって柔軟な解決策を模索できるのが最大の特徴といえます。

この手続きでは、会社側が債権者に対して現在の財務状況を正直に開示し、事業継続のための再建計画を提示します。債権者側はその計画の妥当性を検討し、債務の減免や返済期間の延長などに同意するかどうかを判断します。たとえば、月100万円の返済を50万円に減額してもらったり、3年間の返済猶予を設けたりといった条件変更が可能です。

私的整理の大きなメリットは、手続きが公開されないため、取引先や金融機関に対する信用失墜を避けやすいことです。民事再生の場合は官報に掲載されるため、どうしても対外的な信用に影響が出ます。また、手続きにかかる時間も比較的短く、弁護士費用などのコストも抑えられる傾向にあります。

ただし、私的整理を成功させるには、債権者全員の同意が必要です。一人でも反対する債権者がいれば、手続きは頓挫してしまいます。そのため、債権者との普段からの関係性や、提示する再建計画の説得力が重要な要素となります。

私的整理は裁判所を通さない分、手続きの自由度が高く、会社の信用毀損を最小限に抑えられます。一方で、債権者全員の同意が必要となる条件も存在します。対して民事再生は、裁判所の監督下で進む強制力があり、債権者の一部が反対しても手続きを進められる特徴を持ちます。

民事再生と私的整理どちらを選ぶべきか

民事再生と私的整理のどちらを選択すべきかは、会社の具体的な状況によって大きく異なります。両者の主な違いと、選択のポイントをまとめました。

民事再生

 ・手続きの概要:裁判所の監督下で行われる法的手続き。
・手続きの公開性:官報に掲載され、手続き内容が公開される。
・強制力:債権者集会で多数決により再生計画案を可決できる。
・信用への影響:信用力は大きく低下する。
・手続き期間:半年〜1年程度かかるのが一般的。
・費用:予納金や弁護士費用が必要で、比較的高額になりやすい。
・債務カットの幅:大幅な債務削減が可能で、実例では80%程度の減額もある。

私的整理

 ・手続きの概要:裁判所を介さず、当事者(債務者と債権者)の合意による私的な交渉。
・手続きの公開性:原則非公開で、債権者のみが知る形となる。
・強制力:債権者全員の同意が必要で、1社でも反対があると成立しない。
・信用への影響:信用毀損を最小限に抑えられる可能性が高い。
・手続き期間:比較的短期間での解決が可能。
・費用:弁護士費用などが発生するが、民事再生よりは低額で済む傾向。
・債務カットの幅:債権者の理解・合意次第で柔軟な対応ができる。

まず考慮すべきは債権者の数と種類です。債権者が少数で、良好な関係を維持している金融機関や取引先が中心であれば、私的整理による解決が現実的でしょう。一方、債権者が多数にわたり、交渉に応じそうにない相手が含まれる場合は、民事再生の方が確実性があります。

会社の事業内容や規模も判断要素の一つです。BtoB企業で取引先が限定されており、事業の継続性が重要な場合は、対外的な信用を保ちやすい私的整理が適していることがあります。逆に、多数の顧客を相手にするBtoC企業や、許認可が重要な業種の場合は、法的な手続きとしての民事再生の方が、ステークホルダーに対する説明がしやすい場合もあるでしょう。

財務状況の深刻度も重要な判断基準です。債務超過の程度が比較的軽微で、主要債権者の理解を得られる見込みがあるなら私的整理で十分かもしれません。しかし、債務超過が深刻で、大幅な債務カットが必要な状況であれば、法的拘束力のある民事再生の方が現実的です。民事再生では債権額の一定割合(通常は20%程度の返済で残債務を免除)が可能です。

時間的な制約も考慮すべき要素です。資金繰りに余裕があり、じっくりと債権者との調整を行える状況なら私的整理が適しています。しかし、支払い不能の状態が目前に迫っており、迅速な対応が必要な場合は、民事再生の申立てによって法的保護を受けることを優先すべきでしょう。

民事再生が向いている会社の特徴

民事再生手続きが特に適している会社には、いくつかの共通した特徴が見られます。

・債権者の数が多い、または交渉に応じない債権者がいる会社
複数の金融機関から借り入れがある場合や、多数の仕入れ先に対して買掛金を負っている場合では、全債権者の同意を取り付けるのは困難です。民事再生であれば、債権者集会での多数決によって再生計画案を可決できるため、一部の反対があっても手続きを進められます。
・債務超過の程度が深刻で、大幅な債務カットが必要な会社
私的整理では債権者の自発的な協力に頼る部分が大きく、大きな負担軽減を求めるのは難しくなります。しかし、民事再生では法的な枠組みの中で、債権額の大幅な圧縮が可能です。実際に、債務を80%程度カットして事業を継続している事例も少なくありません。
・事業の社会的意義が高く、従業員数が多い会社
地域経済に与える影響が大きい企業の場合、取引先や金融機関も事業継続の必要性を理解しやすく、民事再生手続きに対する協力を得やすい傾向にあります。雇用維持の観点からも、法的な手続きとしての正当性が評価されるでしょう。
・許認可事業を営んでいる会社
建設業許可や運送業許可など、事業継続に許認可が必要な業種では、私的整理よりも法的手続きとしての民事再生の方が、許認可官庁に対する説明がしやすいことがあります。透明性の高い手続きであることが、許認可の維持に有利に働く場合もあるからです。

ただし、民事再生の手続きは複雑で、再生計画案の作成から債権者との調整まで、高度な専門知識と経験を要します。会社の状況を正確に把握し、最適な選択肢を見つけるためにも、早期に弁護士や公認会計士といった専門家に相談することをおすすめします。

法人の民事再生の具体的な流れと必要な準備

法人の民事再生手続きは、申立てから認可決定まで半年から1年程度の期間を要する複雑なものです。手続きの各段階で求められる対応や準備を理解することが、手続きのスムーズな進行と事業の継続につながります。

申立てから開始決定まで:具体的な手続きの手順

民事再生の申立てから開始決定までは、通常3週間から1か月程度の期間がかかります。

1.裁判所での面接
申立て当日には裁判所での面接が行われ、申立ての理由や事業継続の可能性について詳しく質問されます。なぜ民事再生が必要なのか、事業を継続する意思と能力があるのかを具体的に説明することが求められる段階です。
2.監督委員の選任
申立て後、裁判所は監督委員を選任します。監督委員は通常、弁護士が選任され、申立て会社の業務や財産の管理状況を監督する重要な役割を担います。この段階で、会社の銀行口座の管理方法や重要な契約の締結について監督委員の同意が必要になるため、日常の業務運営にも影響が出ます。
3.債権届出期間の設定
開始決定がなされると、債権者に対して債権届出の期間が設定されます。この期間は通常2か月程度で、すべての債権者が自分の債権額を裁判所に届け出る必要があります。開始決定により、債権者による個別の取立てや強制執行が禁止されるため、会社は一時的に支払い圧力から解放されます。

ただし、開始決定後も事業継続のための資金調達や従業員の雇用維持など、多くの課題が待ち受けます。特に取引先との信頼関係の維持は事業継続の鍵となるため、丁寧な説明と今後の方針の共有が不可欠です。

必要書類と申立て費用の準備

民事再生の申立てには膨大な書類の準備が必要で、その作成には通常1か月から2か月程度の期間を要します。

【主要な必要書類】

・申立書本体: 会社の沿革、事業内容、財務状況、再生手続きが必要な理由などを詳細に記載
・財務関係書類
 ☑️直近3年分の決算書
 ☑️試算表
 ☑️資金繰り表
 ☑️債権者一覧表(すべての取引先、金融機関、従業員への未払い給与などを含む)
 ☑️債務者一覧表
 ☑️財産目録(会社の資産を詳細に記載)
・事業継続に関する書類
 ☑️事業計画書
 ☑️収支予測書(民事再生後の具体的な事業戦略や収益改善策、返済計画などを数値で示す)

特に金融機関などの債権者は、この事業計画の実現可能性を重視するため、現実的で詳細な計画の策定が重要です。

【申立て費用】

申立て費用については、裁判所に納める予納金が必要です。負債総額に応じた目安は以下の通りです。

・負債総額が5,000万円未満の場合:予納金はおおよそ200万円程度。
・負債総額が1億円未満の場合:予納金はおおよそ300万円程度。
・負債総額が5億円未満の場合:予納金はおおよそ400万〜600万円程度。
・負債総額が10億円未満の場合:予納金はおおよそ700万〜1,000万円程度。

この他に、監督委員への報酬として月額20万円から50万円程度、弁護士費用として300万円から800万円程度が一般的です。これらの費用は申立て前に確保しておく必要があるため、資金繰りが厳しい中での準備は大きな負担となることが予想されます。

債権者集会と認可までの流れ

開始決定後、再生計画認可までの主なスケジュールは以下の通りです。

1.債権者集会(初回)
開始決定から通常2か月から3か月後に開催されます。この集会では、申立て会社が債権者に対して会社の現状と今後の方針を説明し、質疑応答が行われます。債権者の理解と協力を得るために、誠実で具体的な説明が求められる場です。
2.再生計画案の作成
民事再生手続きの中核となる作業です。この計画案では、各債権者への返済方法や返済期間、事業再建の具体策などを詳細に定めます。一般的に、無担保債権については元本の一部カットと長期分割払いを提案することが多く、返済期間は5年から10年程度に設定されます。
3.債権者による決議
再生計画案が完成すると、債権者による決議が行われます。この決議では、議決権を有する債権者の過半数の同意、かつ議決権総額の2分の1以上の同意が必要です。大口債権者の反対により決議が成立しない場合もあるため、事前の根回しや交渉が重要になります。
4.裁判所による認可決定
債権者の同意が得られれば、裁判所による認可決定が行われます。認可決定までの期間は、開始決定から通常6か月から1年程度です。認可決定後は、再生計画に従って債権者への返済を開始し、事業の再建に本格的に取り組むことになります。

この一連の手続きは、特に中小企業の場合、経営者が手続きのすべてを理解し対応することは現実的ではありません。まずは民事再生や法人破産に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

再生計画作成から成功までのポイント

企業の民事再生は単なる延命措置ではありません。事業の根本的な見直しを行い、持続可能な経営基盤を再構築する重要な機会です。成功の鍵は、現実的かつ具体的な計画の策定と、関係者との信頼関係の構築にあります。

効果的な再生計画案の作り方

再生計画の作成において最も重要なのは、現状を正確に把握し、実現の可能性が高い数値目標を設定することです。多くの経営者が陥りがちな落とし穴は、希望的観測に基づいた楽観的すぎる計画を立ててしまうことにあります。

1.根本原因の明確化
過去3年間の財務データを詳細に分析し、売上減少や収益悪化の根本原因を明確にします。単に「景気が悪い」という一般論ではなく、「主要取引先の発注量が30%減少した」「原材料費が15%上昇したにも関わらず販売価格に転嫁できていない」といった具体的な要因特定が重要です。
2.事業の選択と集中
複数の事業部門がある場合、収益性・将来性・自社の強みを基準に、注力すべき事業と撤退すべき事業を明確に分類します。たとえば、製造業であれば特定の製品ラインに集中、小売業であれば立地の良い店舗に経営資源を集約するといった判断が必要です。
3.資金繰り改善計画
月次ベースでのキャッシュフロー予測を最低12か月分作成し、運転資金需要を正確に把握します。売上回復の時期や規模について、過度に楽観的な見込みを避け、保守的なシナリオでも事業継続が可能な計画を策定することが債権者の信頼獲得につながります。
4.人件費の見直し
避けて通れない課題の一つです。しかし、単純な人員削減ではなく、業務効率化や配置転換により生産性を向上させる方法を優先的に検討しましょう。従業員のモチベーション維持は再生成功の重要な要素となります。

債権者との交渉を成功させる5つのコツ

債権者との交渉は、企業再生の成否を左右する最も重要な局面です。相手との信頼関係を構築し、互いに利益を得る関係を築くことが成功の鍵となります。

1.早期の情報開示と透明性の確保
経営状況が悪化した際、多くの経営者が債権者への報告を先延ばしにしがちですが、これは最も避けるべき行動です。問題が発覚した時点で速やかに主要債権者に状況を説明し、改善に向けた取り組みを共有しましょう。隠し事がないことを示すために、月次試算表や資金繰り表の定期的な提出を申し出ることも効果的です。
2.具体的で実現可能な返済計画の提示
「できるだけ早く返済します」といった曖昧な提案では債権者の理解は得られません。月額返済可能額を具体的に算出し、完済までの期間を明示した詳細な返済スケジュールを提示してください。また、売上が計画を上回った場合の追加返済についても言及すると、誠意が伝わりやすくなります。
3.担保や保証の追加提供
既存債権の回収可能性を高めるため、可能な範囲で追加担保や保証人の提供を検討しましょう。不動産や機械設備だけでなく、売掛債権の譲渡担保設定や、代表者以外の保証人追加なども選択肢となります。ただし、将来の事業運営に支障をきたさない範囲での提案が重要です。
4.定期的な進捗報告と相談体制の構築
交渉成立後も、計画の進捗状況を定期的に報告し、問題が生じた際は早期に相談する体制を整えましょう。四半期ごとの面談設定や、月次での簡易レポート提出など、債権者が安心できるコミュニケーション体制を提案することで、長期的な協力関係を築けます。
5.複数債権者がいる場合の公平性の確保
金融機関、取引先、リース会社など複数の債権者がいる場合は、返済条件や情報提供において公平性を保つことが重要です。特定の債権者を優遇していると疑われると、他の債権者からの協力を得ることが困難になります。債権者会議の開催や、統一した返済比率の適用など、透明性の高い対応を心がけましょう。

経営者の責任と今後の役割

債務整理における経営者の責任は、選択する手続きや会社の状況によって大きく変わります。特に中小企業の経営者の場合、個人保証を行っているケースが多く、会社の債務整理と併せて個人の債務整理も検討する必要があることが一般的です。

民事再生の場合、経営者は引き続き会社の経営に携わることが可能です。むしろ、事業に精通した経営者が再建を主導することが期待されており、裁判所に提出する再生計画の策定や実行において中心的な役割を果たす必要があります。ただし、これまでと同様の経営手法では再び経営難に陥る可能性もあるため、経営体制の見直しや新たな経営戦略の構築が求められます。

破産の場合は、破産管財人が選任され、会社の財産の管理・処分は管財人が行います。経営者の役割は、管財人への協力や必要書類の提出、財産の引き渡しなどに限定されます。

個人保証の問題については、経営者保証ガイドラインという仕組みがあります。一定の条件を満たせば、個人保証債務についても債権者との協議により減免を受けられる可能性があります。これは法的な手続きではありませんが、債権者の理解が得られれば、経営者個人の経済的再生を図れる制度です。

経営者として最も重要なのは、現在の状況を正確に把握し、利害関係者に対して誠実に対応することです。専門家に相談することで、それぞれの状況に応じた適切な解決方法を見つけられ、関係者への影響を最小限に抑えながら問題解決を図ることが可能となります。

専門家(弁護士・会計士)の選び方と依頼する時期

企業再生は経営者一人で乗り切れるものではありません。適切な専門家のサポートを得ることで、成功確率は大幅に向上します。しかし、専門家選びを間違えると、貴重な時間と資金を失うリスクもあります。

専門家に依頼すべき時期の判断

「もう少し自分で頑張ってみてから」と考える経営者が多いのですが、専門家への相談は早ければ早いほど有効な選択肢が残されています。資金繰りが3か月以内に行き詰まる見込みが立った時点、あるいは売上が前年同期比で30%以上減少し回復の見通しが立たない状況になった時点で、専門家への相談を検討してください。

手形の不渡りや支払遅延が発生してからでは、私的整理よりも法的整理を選択せざるを得なくなる可能性が高くなります。早期の相談により、事業価値を最大限に保持した再生計画の策定が可能となるでしょう。

弁護士の選び方

企業再生に精通した弁護士を選ぶ際は、過去の実績と専門性を重視しましょう。単に企業法務を扱っているだけでなく、中小企業の再生案件を年間10件以上手がけている弁護士が理想的です。また、あなたの業界特有の事情を理解しているかも重要なポイントとなります。

面談時には、具体的な再生手法(私的整理、民事再生、事業譲渡等)についてのメリット・デメリットを分かりやすく説明できるか、費用体系が明確かを確認してください。着手金だけでなく、成功報酬の算定基準についても事前に詳しく話し合っておくことが大切です。

会計士・税理士への相談

財務面での専門的なサポートには、民事再生法に詳しい公認会計士や税理士の協力が不可欠です。特に、事業計画の数値面での妥当性検証や、債権者向けの説明資料作成においては、その専門性が威力を発揮します。

顧問税理士がいる場合でも、再生業務の経験が豊富な専門家にセカンドオピニオンを求めることをおすすめします。普段の税務申告業務と企業再生業務では、求められる知識とスキルが大きく異なるからです。

まとめ

資金繰りの問題や債務整理について考えることは、中小企業の経営者にとって決して恥ずべきことではありません。むしろ、早期に適切な対応を検討する決断こそが、事業の継続と従業員の雇用を守る責任ある経営判断といえるでしょう。

・民事再生は事業継続を目指す再建型の法的手続きです。
・債務の大幅な圧縮や経営陣の続投が可能といったメリットがある一方で、信用力低下や手続きの複雑さといったデメリットも存在します。
・私的整理との比較では、債権者の数や財務状況の深刻度に応じて最適な選択が異なります。
・手続きには専門的な知識と準備が必要であり、専門家との連携が成功の鍵を握ります。

経営の現場では、予期せぬ困難に直面することがあります。しかし、一人で抱え込む必要はありません。法人の債務整理は、会社と従業員、そしてあなた自身の未来を再構築するための前向きな選択肢です。

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