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法人破産で会社の銀行口座が凍結される?凍結される理由と対応方法を解説

「会社の銀行口座が、凍結されて使えなくなってしまうかもしれない…」

すでに資金繰りに苦しんでいる場合や、法人破産を決意された場合に、そのような不安があるかもしれません。法人破産による口座凍結は避けられない現実ですが、そのタイミングと理由を事前に知っておけば、打つべき手はあります。

この記事では、法人破産時の口座凍結について、いつ、どのような影響があるのか、そして何から手をつけたら良いのかを具体的に解説いたします。

法人破産で銀行口座が凍結される3つの理由

法人破産に伴う口座凍結は、会社の状況や手続きの進行、債権者の行動によって、発生するタイミングが異なります。決して一律ではありません。まずは、凍結が起こる主要な3つのパターンを理解することが大切です。

主なパターンは、以下の3つです。それぞれ法的根拠や目的が違い、会社や従業員の皆さんの生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。

1.破産申立て時の保全処分

主な発生時期:破産申立てから数日以内
・主体:裁判所
・目的:破産財産の散逸防止

2.債権者による仮差押え

・主な発生時期:破産申立て前
・主体:債権者
・目的:将来の債権回収の確実化

3.銀行による貸付金保全のための任意凍結

・主な発生時期:会社の経営状況悪化時
・主体:銀行
・目的:貸付金の保全

順を追って解説していきます。

1.破産申立て時の保全処分

法人破産を裁判所に申し立てると、ほぼ確実に「保全処分」による口座凍結が起こります。これは最も一般的な事例で、裁判所が会社の財産が失われるのを防ぐため、破産法に基づいて行う措置です。

申立てから数日後には発令され、銀行に通知された時点で口座の入出金は完全に停止されます。多くの場合、この凍結は、破産管財人が選任されるまで続くものです。その後は管財人の管理のもと、必要に応じて口座が運用されることになります。

特に注意したいのは、この凍結がメインバンクだけでなく、給与振込用や定期預金、当座預金等、会社名義の「すべての口座」に及ぶ点です。これにより、従業員への給与支払いや取引先への支払いが突然止まり、大きな混乱を招く可能性があります。

保全処分による凍結は法的拘束力が非常に強く、銀行独自の判断で解除することはできません。この状況で資金移動を試みることは、犯罪とみなされる恐れがあります。絶対に避けるべき行為です。

2.債権者による仮差押えでの事前凍結

破産申立前でも、債権者が「仮差押え」を申し立てた場合、裁判所の決定によって口座が凍結されることがあります。これは、債権者が将来の債権回収を確実にするための措置で、経営者にとっては予期せぬタイミングで起こるかもしれません。

この凍結は、債権者が「会社の財産が散逸する恐れがある」と裁判所に認められた場合に実行されるものです。たとえば、資金繰りが悪化している兆候が見られる場合や、経営者が資産を隠す可能性があると判断された場合が該当します。

申立て前の凍結は、会社の資金繰りに致命的な打撃を与える可能性が高いでしょう。もし仮差押えの対象が主要な資金管理口座であれば、日々の事業運営が立ち行かなくなり、破産申立てを急ぐことになるケースも少なくありません。

仮差押えを行うのは、一般的に大口債権者や金融機関が多い傾向にあります。中小企業では、取引先や金融機関からの借入金に関連して発生するケースがほとんどです。

3.銀行による貸付金保全のための任意凍結

銀行が独自の判断で行う「任意凍結」は、法的な手続きとは別に、貸付金を保全する目的で行われます。これは、融資先の経営状態を常に監視し、返済能力に疑問が生じた場合に銀行がとる予防策の一つです。

凍結のタイミングは、決算書の内容が悪化したり、返済が延滞したり、経営者と連絡が取れなくなったりした場合など、銀行が「貸付金の回収に支障が出る」と判断した時点です。判断基準は各銀行で異なりますが、3ヶ月程度の返済延滞や大幅な売上減少が続くと実行されるケースが多いでしょう。

任意凍結は、法的根拠が他の凍結に比べて相対的に弱いため、銀行との話し合いや返済計画の見直しによって解除される可能性もあります。しかし、破産申立てを検討している状況では、銀行と交渉して凍結解除を求めるのは現実的ではないかもしれません。むしろ、破産手続きに向けた準備を優先するべき時期といえるでしょう。

破産申立て前に知っておくべき口座凍結の影響

破産を申し立てると、関連する銀行口座は即座に凍結される恐れがあります。その影響範囲は想像以上に広く、法人の口座だけでなく、代表者個人や、ときには関連する口座にまで及ぶケースも少なくありません。

口座凍結は、破産申立書が裁判所に受理された時点か、銀行が破産手続きの開始を知った時点のいずれか早い方に起こるでしょう。そのため、申立て前に、どの口座がどのような影響を受けるのかを確認し、必要な資金の移動や決済方法の変更を済ませておくことが大切です。特に注意したいのは、メインバンクとして利用している銀行です。法人口座だけでなく、同じ銀行で開設している代表者個人の口座や、保証関係にある口座も連動して凍結される可能性があります。

法人口座と代表者の個人口座の連動している場合の影響

最も深刻な影響の一つは、法人と代表者個人が同じ銀行を利用している場合に「連動凍結」されてしまうことです。特に、代表者が法人の債務の連帯保証人になっている場合、個人の口座も同時に凍結されるリスクが非常に高いといえます。

連帯保証契約がある場合、銀行は法人破産の申立てを知ると同時に、連帯保証債務の履行を求める権利を行使し、代表者の個人口座からも債権回収を図ろうとします。そのため、給与振込口座や生活費の管理口座であっても、突然凍結される可能性を否定できません。

さらに注意が必要なのは、夫婦間での口座管理です。配偶者名義の口座であっても、実質的に法人や代表者の資金管理に使われていると銀行が判断すれば、凍結の対象となることがあります。特に、配偶者が法人の役員を務めていたり、口座への入金履歴が法人の売上と連動していたりする場合は、十分な注意が必要です。

連動リスクを避けるには、破産申立てを検討する段階で、生活に必要な資金を別の銀行の個人口座へ移動させておくことが大切です。ただし、財産隠匿と疑われないよう、大口の資金移動は避け、生活に必要な範囲内での移動に留めることをおすすめします。

従業員給与振込み口座への影響

従業員への給与支払いは、経営者として最も責任が重い職務の一つです。法人口座が凍結されれば、給与振込ができなくなり、従業員の生活に直接的な影響が出てしまうことが予想されます。

給与振込口座の凍結は、単に支払いが遅れるだけではありません。労働基準法では賃金の支払いに厳格な規定があり、支払日に遅滞なく支払うことが義務付けられています。口座凍結で給与支払いが困難になったとしても、この法的義務は継続するため、代替手段を準備しておく必要があります。

対応策の一つは、破産申立て前に別の銀行の口座を開設し、給与支払い分の資金を事前に移動させておく方法です。しかし、現実的に移動できる金額には限りがあります。破産手続きでは、従業員の給与や退職金は優先債権として扱われるため、破産管財人と相談して適切な金額を確保することもできるかもしれません。

給与の支払い方法を現金手渡しに変更することも、方法の一つですが、ただし、現金での支払いには労働者の同意が必要です。また、支払いの証拠として給与明細書の発行や受領書の取得など、事務処理が複雑になる点も考慮しておくべきでしょう。

取引先との決済口座が使えなくなる時期

取引先との決済口座が凍結されれば、事業継続にも深刻な影響が出ます。特に、継続的な取引のある得意先からの売掛金回収や、仕入先への支払いが滞ってしまうと、破産申立て前であっても事業運営が困難になる可能性が高いといえます。

口座凍結は、銀行が破産申立ての事実を知った時点に起こります。そのため、申立書を提出したその日から凍結が始まると考えておいた方が良いでしょう。しかし実際には、申立て準備の段階で弁護士から債権者に受任通知が送られた時点で、銀行が状況を察知し、事前に凍結措置をとるケースも見られます。

このような状況を避けるためには、重要な決済については事前に現金取引に変更したり、別の銀行口座を利用した決済方法に切り替えたりすることが大切です。ただし、取引先への説明が必要になるため、信頼関係を維持しながら円滑に移行できるよう努める必要があります。

自動引き落としで処理している継続的な支払い(リース料、保険料、公共料金など)についても、事前に支払い方法の変更手続きをしておくことをおすすめします。これらの支払いが滞ると、事業継続に必要なインフラやサービスが利用停止になる可能性もあります。

銀行口座の凍結を解除する方法はある?

破産手続き中に凍結された口座の解除は、基本的には極めて困難です。銀行は債権保全のために凍結を行っているため、通常は破産手続きが完了し、債権関係が整理されるまで凍結状態は続きます。

ただし、完全に解除できないわけではありません。破産管財人が選任された後、管財業務に必要な範囲で口座の一部機能を利用できる場合があります。例えば、事業継続が必要と判断された場合や、債権者への配当原資を確保するために営業を継続する必要がある場合などが考えられます。

代表者個人の口座については、生活に必要な最低限の金額であれば、裁判所の許可を得て解除が認められるケースもあります。しかし、これは例外的な措置であり、厳格な審査を経て判断されるものです。申請に時間がかかることも多いため、緊急の資金需要に対応することは難しいといえます。

現実的な対応策としては、凍結前に別の銀行で口座開設を済ませ、必要最小限の資金を確保しておくことが最も確実な方法です。この際、財産隠匿と疑われないよう、移動する金額や使途や残高ついて明確な記録を残し、弁護士と相談しながら適切な範囲で対応するよう心がけましょう。

申立て前にやるべき3つの準備と絶対にやってはいけないこと

「口座が凍結されてしまうと、会社の資金も、自分の生活費も使えなくなるのでは?」

法人破産を検討されている経営者の方にとって、この不安は非常に大きいでしょう。しかし、適切な事前準備を行うことで、会社に必要な資金を確保し、ご自身の生活も守ることは可能です。

1.会社の資金を確保する

破産手続きを申し立てる前であれば、法的に問題のない範囲で、会社に必要な運転資金を確保することができます。しかし、この時期の資金操作は細心の注意が必要です。後に破産管財人や裁判所から問題視されないよう、常に「適法性」を意識して行動することが求められます。

まず、通常の営業活動の範囲内で資金を確保しましょう。売掛金の回収を急ぐ、在庫商品を適正価格で売却する、未収金を整理するといった行為は、経営の合理化として正当な行為とみなされます。これらの活動で得られた資金は、破産手続き開始後も破産管財人との協議により、必要経費としての使用が認められる可能性が高いでしょう。

現金確保の一つの方法として、複数の金融機関に口座を分散させておくことも有効です。メインバンクが破産申立てを把握して口座を凍結しても、他の金融機関の口座がすぐに凍結されるとは限りません。短い期間であれば必要な資金にアクセスできる可能性がありますが、これは一時的なものと認識しておきましょう。破産手続き開始決定後には、すべての口座が管財人の管理下に置かれることになります。

また、破産申立て前に、弁護士費用や必要最小限の事業継続費用を別途確保しておくことも重要です。これらの費用は、破産手続きを円滑に進める上で欠かせないものです。事前に適切に準備することで、手続き全体がスムーズに進行するでしょう。

2.従業員給与を守るためにすべきこと

従業員の給与や退職金は「労働債権」として法的に保護されており、破産手続きでも他の一般債権より優先的に扱われます。しかし、実際に従業員への支払いを確実にするためには、事前の準備と適切な手続きが欠かせません。

その中でも特に重要なのが、「未払賃金立替払制度」の活用です。これは、企業が倒産した際に、独立行政法人労働者健康安全機構が未払い賃金の一部を立て替えて支払ってくれる公的な制度です。利用には労働基準監督署への申請や必要書類の準備など、一定の手続きが必要です。破産申立てを検討している段階から、労働基準監督署や社会保険労務士に相談し、準備を進めておくことをおすすめします。

給与債権を確保するもう一つの方法は、破産申立て前に、可能な範囲で給与の支払いを完了させることです。通常の給与支給日に支払う給与であれば、偏頗弁済には該当しません。資金に余裕がある段階で支払いを済ませておくことは適法です。有給休暇の買取りや退職金の一部前払いなども、就業規則に基づいて行えば問題ないでしょう。

さらに、従業員への丁寧な説明と協力要請も重要な準備です。破産手続きの現実と立替払制度の仕組みを丁寧に伝え、必要書類の準備や手続きへの協力を求めることで、債権確保につながるだけでなく、スムーズに手続きを進めることができます。そのためには、従業員の理解と協力が不可欠です。労働債権の確保には時間がかかる場合も多いため、破産を検討し始めた早い段階から専門家に相談し、従業員保護のための具体的な計画を立てることが欠かせません。

3.個人資産と法人資産を明確に分離する

法人破産時に個人の口座凍結を避けるためには、法人資産と個人資産を明確に分離しておくことが何よりも重要です。これは法的に認められた正当な権利であり、適切に実行すればご自身の生活を守ることにつながります。

まず、銀行口座の完全分離を徹底しましょう。法人名義の口座と個人名義の口座は異なる金融機関で開設し、資金の流れを明確に区別することが基本です。例えば、法人口座をA銀行、個人口座をB銀行で管理し、両者間の資金移動は必ず適正な理由(役員報酬、経費精算など)を明文化して記録に残すようにしてください。

次に、個人資産の証明書類を整備しておくことも大切です。ご自身の名義の不動産、車両、預金などについては、いつ、どのような資金源で取得したのかを明確に示す書類を保管してください。特に、法人設立以前から保有していた資産や、相続・贈与で取得した資産については、その経緯を証明する書類一式を準備しておくことをおすすめします。

資金の流れについても、個人と法人の取引を適正に処理しましょう。代表者が法人に貸し付けた資金については金銭消費貸借契約書を作成し、法人から受け取る役員報酬については所得税の源泉徴収を適切に行い、給与明細を保管してください。これらの書類は、個人資産の正当性を証明する重要な証拠となるものです。

配偶者名義での生活資金口座準備

配偶者名義の生活資金口座を準備しておくことも、法人破産時の生活維持に非常に有効な手段です。ただし、この対策は適法な範囲内で、適切な時期に行うことが重要になります。

配偶者口座へ資金移動を行う際は、その資金の出所と理由を明確にしておく必要があります。例えば、代表者の役員報酬や個人事業による収入を原資として、家計管理の一環として配偶者名義の口座に生活費を預ける形が自然です。月々の生活費として合理的な範囲内(一般的には月収の1~2ヶ月分程度)であれば、正当な家計管理として認めらるでしょう。

重要なのは、これらの資金移動を法人の経営状況が悪化する前、つまり通常の経営活動の一環として行うことです。破産手続きの直前に大量の資金を移動させると、財産隠しと見なされるリスクがあります。日常的な家計管理として、定期的に適正な金額を移動させる習慣を作っておくのが望ましいといえます。

配偶者自身の収入がある場合は、その収入を原資とした貯蓄も重要な生活基盤となるものです。配偶者がパートタイムで働いている場合でも、その収入を着実に積み立てることで、万が一の際の生活資金を確保できるでしょう。配偶者名義の口座については、通帳や取引履歴をしっかりと保管し、資金の出所を証明できるようにしておく必要があります。

連帯保証による個人口座凍結を回避する方法

法人の借り入れに対して代表者が連帯保証人になっている場合、法人破産と同時に連帯保証債務が発生し、個人の口座が凍結される可能性があります。この状況を回避するための対策を、事前に講じておくことが非常に大切です。

まず、連帯保証債務の全体像を正確に把握しましょう。どの金融機関からの借り入れに対して連帯保証をしているのか、債務額はいくらか、担保設定の有無などの情報をリストアップしてください。その上で、連帯保証債務の整理方法について専門家と相談し、ご自身の債務整理手続き(個人再生や自己破産)の可能性も含めて検討することをおすすめします。

個人口座の分散化も有効な対策の一つです。連帯保証債務がある金融機関以外に複数の口座を開設し、生活資金を分散して管理することで、もし一つの金融機関で口座凍結が起きても、他の口座で生活を維持できる体制を構築できます。特に、給与振込口座や公共料金の引き落とし口座については、連帯保証債務のない金融機関を選択することが重要です。

早期の債務整理検討も選択肢の一つとなります。法人破産が避けられない状況が明確になった段階で、代表者個人についても債務整理手続きを同時に進めることを検討してください。個人再生であれば住宅を維持しながら債務を減額できる可能性があり、自己破産であっても必要最小限の生活費は確保できます。これらの手続きを適切なタイミングで開始することで、より良い条件での解決が期待できるでしょう。

絶対に避けるべき「やってはいけないこと」

破産申立て前の資産移動については、破産法で厳しく規制されており、不適切な資産移動は「否認権」の対象となって法的に無効とされる可能性があります。

最も注意すべきは「偏頗弁済(へんぱべんさい)」です。これは、特定の債権者に対してのみ優先的に弁済を行うことを指します。破産手続き開始前60日以内(一定の場合は6ヶ月以内)に行われた偏頗弁済は、破産管財人によって取り消される可能性があります。

具体的に禁止される資産移動の例を挙げると、以下のものがあります。

・親族や関係者への金銭贈与や不動産の名義変更
例:会社名義の不動産を代表者個人や家族名義に変更する行為は、明らかな財産隠しと判断されます。
・特定の仕入先や取引先への優先弁済
「長年お世話になった取引先だから」「今後も関係を維持したいから」という気持ちは理解できますが、法的には他の債権者との公平性を害する行為とみなされます。
・会社の資産を著しく安い価格で売却すること
適正価格での売却であれば問題ありませんが、時価の半額以下で売却するような場合は、財産減少行為として問題視される可能性があります。
・金融機関への返済の優先
借り入れ元本の返済や利息の支払いを、他の支払いに優先させることも、偏頗弁済に該当する可能性があります。

一方で、通常の事業活動に必要な支払いは問題ありません。例えば、従業員への給与支払い、社会保険料の納付、事業継続に必要な仕入代金の支払いなどは、適法な支出として認められます。判断に迷う場合は、必ず破産手続きを担当する弁護士に事前相談を行ってください。

申立て後の事業整理の進め方と銀行口座

「法人破産の手続きが始まると、口座が凍結されて、事業整理に必要な支払いができなくなるのでは…」と心配されている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際には、破産管財人の管理のもと、新たな口座を開設したり、必要な支払いを行ったりすることは可能です。

法人破産の手続きに入ると、従来の銀行口座は凍結されます。しかし、事業整理が完全に停止されるわけではありません。破産管財人の監督のもと、事業を適切に整理し、債権者へ公平な配当を実現するための仕組みが用意されていますので、解説していきます。

新得財産口座の開設手続きと管理の方法

破産管財人が選任されると、事業整理のために「新得財産管理口座」を開設するのが一般的です。この口座は、破産手続開始後に発生する財産(新得財産)を管理するための専用口座で、破産管財人の名義で開設されます。

新得財産管理口座を開設するために、破産管財人が銀行に対して必要書類を提出します。破産管財人選任決定書、破産管財人の印鑑証明書、破産手続き開始決定書の写しなどが必要です。口座開設後は、破産管財人のみが口座を操作でき、破産者である法人の代表者は直接的に操作する権限を持ちません。

この口座には、破産手続き開始後に発生する売上、設備や在庫の売却代金、回収された売掛金などが入金されます。一方、支出については、破産管財人が事業整理に必要と判断した費用に限定されるでしょう。例えば、在庫商品の保管費用、設備の撤去費用、従業員の退職に伴う必要最小限の支払い、取引先への緊急的な支払いなどです。

管財人は、この口座の収支について詳細な帳簿を作成し、裁判所に定期的に報告する義務があります。また、債権者集会でも収支状況が報告され、透明性が確保されます。このように、新得財産管理口座は、破産手続きの公正性を保つための重要な仕組みとして機能しているのです。

破産管財人との連携による支払いの優先順位

破産手続きでは、限られた財産から債権者へ支払いを行う際に、法律で定められた優先順位があります。破産管財人は、この優先順位に従って支払いを実行し、事業整理を進めていくでしょう。

最優先されるのは、破産手続きの費用(管財人報酬、裁判所費用など)です。次に、従業員の給料や退職金などの労働債権が優先されます。これらは「財団債権」や「優先的破産債権」として位置付けられ、一般の債権者よりも先に支払われることになります。その後、税金や社会保険料などの公租公課、そして一般の債権者への配当という順序です。

破産管財人との連携においては、支払いの必要性と優先度について率直に相談することが重要です。例えば、「設備のリース料を支払わなければ、リース会社が設備を引き上げて売却代金が下がる可能性がある」といった具体的な状況を管財人に説明し、事業整理全体への影響を検討してもらいましょう。

管財人は、破産財団(債権者への配当原資)を最大化することを目的としています。そのため、短期的な支出が長期的に財団の利益になる場合には、支払いを承認することがあるでしょう。逆に、事業整理に直接関係しない支払いや、特定の債権者への偏頗弁済になる可能性がある支払いについては、厳しく制限されます。このバランス感覚を理解し、管財人とコミュニケーションをとることが重要です。

取引先への適切な説明と最低限の決済方法

破産手続きが開始されると、取引先に対して適切な説明を行うことが重要です。口座凍結によって従来の決済方法が使えなくなることを早めに伝え、今後の取引関係について明確にしておく必要があります。

取引先への説明では、破産手続きの開始と口座凍結の事実を正確に伝えましょう。その一方で、破産管財人の管理下で必要最小限の決済は継続される可能性があることも説明します。ただし、これは管財人の判断によるものであり、すべての取引が継続されるわけではないことも併せて伝えることが重要です。

最低限の決済方法として、破産管財人が必要と認めた場合に限り、新得財産管理口座からの支払いが行われます。具体的には、在庫商品の引き渡しに伴う配送費、設備の撤去作業を依頼した業者への支払い、事業所の明け渡しに必要な清掃費用などです。これらの支払いは、事業整理を円滑に進めるために必要不可欠だと管財人が判断した場合に実行されます。

取引先との関係では、将来的な取引の可能性についても言及することもあるかもしれません。破産手続きが完了し、新たな事業体制が整った場合には、改めて取引関係の構築を検討したい旨を伝えることで、関係の完全な断絶を避けることにもつながります。ただし、これは破産手続きの結果や新たな事業計画によって左右されるため、確約的な表現は避け、可能性の範囲で言及することになるでしょう。

まとめ

法人破産における口座凍結は、多くの経営者の方々が直面する深刻な課題です。しかし、事前に正しい知識を持ち、適切な準備を行うことで、その影響を最小限に抑えることが可能です。

口座凍結のタイミングは、破産手続きの申立て時点から始まり、メインバンクをはじめとする各金融機関で段階的に実施され、この過程で、従業員への給与支払いや取引先への支払いが困難になり、事業継続に大きな支障をきたす可能性もあります。しかし、破産管財人による適切な管理の下、必要な支払いについては裁判所の許可を得て実行できる場合もありますので、ご安心ください。

特に重要なのは、破産手続きを検討し始めた段階から、資金繰りの見直しや支払い優先順位の整理を行うことです。従業員の生活を守るための給与確保、取引先への最低限の支払い計画、そして手続き費用の確保など、限られた資金を戦略的に配分していく必要があります。

また、口座凍結によって日常的な事業運営が困難になることを想定し、現金での支払い体制を整えたり、新たな決済手段を検討したりすることも大切です。これらの準備により、破産手続き中でも必要最小限の事業活動を維持できることになります。

法人破産は、決して簡単な道のりではありません。しかし、適切な専門家のサポートを受けながら進めることで、経営者としての責任を果たしつつ、従業員や取引先への影響を可能な限り抑えることはできるはずです。

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